適正在庫とは?その計算方法や適正在庫を維持するメリットについてお伝えします

 

在庫管理における「適正在庫」とは何か。適正在庫とは、欠品せず、かつ過剰在庫にならない適正な在庫数のことです。原材料・部品・商品などの在庫を効率的に管理するために必要となる概念で、「在庫の仕入・管理にかかるコスト」と、「欠品による販売機会の損失リスク」の間でバランスを取ることにより成立します。

以下、適正在庫の考え方、計算方法や適正在庫を維持するコツなどをご紹介します。

 

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適正在庫の考え方

「適正在庫」とは、在庫を適切に管理するための考え方の一つです。

商品である在庫は、会社が保有しているだけではお金になりません。売れる以上に在庫があると、仕入コスト・管理コスト・廃棄コストなどが余分にかかってしまいます。一方、足りないと、本来なら売れた売上を取り損ねてしまいます。

したがって、適正在庫とは、欠品を出さない最小限の在庫数のことです。在庫が余ると、余計なコストがかかり企業の資金繰りを圧迫します。反対に在庫が足りないと、注文があっても商品を出荷出来ず販売機会を失ってしまいます。

このように、適正在庫を維持することで企業は余分なコストを回避し、利益を最大化することができます。

 

適正在庫と安全在庫の違い

一方、適正在庫とは別に「安全在庫」という概念もあります。安全在庫とは需要変動の不確定要素も加味した欠品にならない最低限の在庫量の合計です。

需要というものは常に一定ではなく、季節や流行によって変わってくるものです。近年のコロナウィルスの流行ではマスクの需要が一気に高まりました。だれも予測できないような事態に備えるのは難しいですが、ある程度の需要を予測し、通常の需要変動でも対応可能となる在庫数が安全在庫となります。

したがって、欠品を出さない最小限の適正在庫と大きく概念は違いません。両者のもっとも大きな違いはその目的です。

先述のように、安全在庫は需要の不確定要素も加味し、できるだけ欠品しないようにすることが目的です。一方、適正在庫は余剰在庫を持たずに保管・管理・廃棄コストを抑え企業利益を最大化することを目的としています。

それでは、企業の利益を最大化させる適正在庫はどのように算出すべきなのでしょう。以下に計算方法をみていきます。

 

適正在庫の計算方法

適正在庫の基本的な計算方法と、適正在庫に関わる指標を以下にご紹介します。

適正在庫の基本の計算

適正在庫の基本的な考え方は、「安全在庫+サイクル在庫」です。

サイクル在庫とは、在庫の発注から次の発注までに消費される在庫量の半分のことです。たとえば、毎月1日にマスクを発注するドラッグストアであれば、一月の半分にあたる15日までに消費されるマスクの数量が、サイクル在庫の数になります。

一方、安全在庫とは、先ほど説明したように需要等の変動があっても欠品にならない最低限の在庫量のことです。

いずれにしましても、安全在庫における需要予測も、サイクル在庫における次の発注までに消費される在庫量も、市場の状態や経験則から予測する必要があります。

「回転率」と「回転期間」 

自社が適正在庫の数量を維持できるかを判断するために必要となる数値が「在庫回転率」と「在庫回転期間」です。それぞれ、以下の式で算出できます。

回転率=年間売上高÷平均在庫高
回転期間=棚卸資産合計÷年間売上高

回転率とは、1年に何回在庫が入れ替わったかを示す数値です。平均在庫高が1億円で年間売上高が5億円の場合、在庫は年に5回ほど入れ替わったことになります。

一方、回転期間とは、全ての在庫資産が倉庫で完全に入れ替わるまでに要した年数のことです。棚卸資産が1億円で、年間売上高が2,500万円の場合、在庫が入れ替わるまでに4年を要したことになります。

したがって、回転率の数値は大きく、回転期間の数値が小さいほど在庫が適正であるといえます。

在庫の効率を知る「交叉(こうさ)比率」

交叉比率とは商品への在庫投資がどれだけの粗利益をあげているかを示し、特に小売業において重要視される比率です。以下の計算式で算出できます。

交叉比率=在庫回転率×粗利益率

例えば在庫回転率が5、粗利益率が20%のときは100となりますが、在庫回転率が2、粗利益率が40%であっても交叉比率は80となります。このように交叉比率は、粗利率が高かったとしても在庫回転率が悪いと、数値は低くなります。

したがって、交叉比率が高いほうが利益をあげている効率の良い商品となります。

自社の中で交叉比率が高く利益を産んでいる商品があった場合、他の商品でもその比率を実現するための適正在庫を以下のように計算することができます。

「目標の交叉比率÷当該商品の粗利益率で目標の在庫回転率」を計算し、「目標売上÷目標の在庫回転率から適正在庫金額」を算出できます。

 

適正在庫を維持するメリット

それでは、適正在庫を維持するメリットは何かを見ていきます。

機会損失を防ぐ

適正在庫を維持できていれば、商品の品切れを起こさず、お客様が欲しい時に商品を販売できるので販売機会を逃しません。その結果、顧客からの信頼が得られれば、繰り返し注文を受けたり、納期が早ければ競合との値引き競争に陥らずにすみます。

特に、工場のラインで使われる部品等は納期が命です。工場のラインがストップしたら何億もの損失を計上してしまうので、お客様は価格よりも納期が重要です。自社が適正在庫を維持し、短い納期を実現できれば競合との価格競争に陥らず、高い利益率を維持することができます。

過剰在庫を持たない

適正在庫を維持できていれば、過剰在庫は発生しません。また、それを管理するための倉庫費や人件費を抑えることができます。また、古くなって捨てなくてはならない場合の廃棄費用も発生しません。さらには、余計な在庫がないことで倉庫内で在庫を探すといった手間も発生しづらくなります。

キャッシュフローの適正化

在庫は、売れなければ、仕入れた時の仕入費用や倉庫での管理費用だけが残り、その費用を回収できず、損失だけが残ります。その結果、自由に使える現金が減り、キャッシュフローも悪化します。一方、適正在庫を維持することで、損失の発生を抑えることが可能になり、キャッシュフローが健全な経営が可能になります。

 

適正在庫を維持するコツ

適正在庫を維持していくにはどうしたら良いでしょうか。そのコツを解説していきます。

発注方式を適正化する

在庫を補充するための発注には、毎月決まった日に発注する「定期発注」と、あらかじめ決めた在庫量を下回った時に同じ量をその都度発注する「定量発注」の2つの方法があります。

①定期発注
定期発注は発注時期が在庫量に影響を受けない代わりに、毎回の必要な発注量を決定するのに時間がかかります。このような方法は、時期によって需要が大きく異なり、需要が安定しない商品に向いている方法です。たとえば、アイス菓子であれば夏場は発注量を増やし、寒くなるにつれ少しづつ減らしていくといったことが考えられます。したがって、定期発注は発注の手間はかかりますが、需要変動に対応しやすいというメリットがあります。

②定量発注
定量発注は、発注時期は異なりますが、毎回同じ量だけ発注する方法です。こちらは定期発注とは異なり、比較的需要が安定しているものに適用される発注方法です。毎回発注の都度を数量を調整しなくていいため、管理が楽です。この方法は、米やパンなど、季節を問わず必ず消費される食材等の在庫管理に向いています。こちらの定量発注は管理が楽な一方、毎回同じ量を発注するので需要変動を考慮できず、在庫が増えやすいというデメリットがあります。

以上をまとめますと、定期発注方式は需要変動が大きいものを管理するのに適しており、定量発注方式は、需要が安定しているものに適しています。

調達・製造リードタイムの短縮

調達や製造のリードタイムが長いと、在庫を確保するまでに時間がかかるので、欠品を避けるためにできるだけ多くの在庫を持たざるを得なくなります。一方、調達・製造リードタイムが短ければ、市場の動向をいち早く反映できるため、需要が減ってくれば生産の量を減らすといったことで過剰在庫の発生が防げます。まさに、トヨタの「ジャストインタイム生産方式」は調達、製造リードタイムを極限まで短縮させる生産方式です。

需要予測の精度を上げる

過去の販売情報を中心に将来の需要を予測します。ただ、需要予測にはどうしても人間の判断が入ります。その場合、現場は得てして在庫が足りなくなるリスクを避けるために、多めに発注しがちです。そこで、最近では人間ではなく機械(AI)を活用する動きも見られます。この場合であれば人間の恣意性が入らず、過剰在庫になりにくいといったメリットがあります。

もちろん、需要は日々環境に応じて変化している以上、100%の需要予測はあり得ません。万が一予測が外れたときであっても、すぐに生産調整できるような業務の仕組みを整えておくことが大事になってきます。

定期的に見直しを行う

市場は刻々と変化しているため、一度適正在庫を決めたとしても、頻繁に見直すことが重要です。商品ごとに在庫の数や在庫回転率を調べ、前回と比べて過剰在庫となっている製品はないか確認しましょう。もし問題のある製品が見つかった場合は、再び適正在庫の数値を決めましょう。また、半年に一回といった形で、見直しの頻度もあらかじめ決めておくことが重要です。

 

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