在庫適正化がうまくいかない理由とは?在庫最適化実現のためにすべきこと

物流現場で生産管理や在庫管理に従事する人は、欠品や過剰在庫のない状態を目指し、適正在庫を常にキープできるように考えるでしょう。

その一方で、「在庫管理の理想と現実は違う」、「いろいろなしがらみがあって在庫整理を進めるのは難しい」という悩みもあるのではないでしょうか。

今回は在庫コントロールにおいて発生しがちな課題を明確にするとともに、これらを踏まえたうえで在庫適正化・在庫最適化を実現・推進していくための方法について詳しく見ていきたいと思います。

在庫適正化がうまくいかない理由とは?

在庫の適正化を推し進めるには、在庫の適正化を妨げる要因を見つけ出し、その解決・改善を図っていく必要があります。

では、実際に在庫適正化が上手く行かない理由には何があるでしょうか?

需要予測の精度が低い

需要予測は繁忙期と閑散期を見極め、前年度、前々年度の実績などを踏まえながら行います。需要予測の精度が低いと在庫品の入荷に実需要との乖離が生じやすくなり、欠品や過剰在庫へと直結してしまいます。

不確定要素に満ちた未来の需要をピッタリ当てることなどまず不可能です。需要予測で重要なのは、需要予測と実需用の誤差も考慮した上で、実需用がどう推移しても適切な対応や軌道修正をしやすい在庫量を予め決定しておくことです。

管理する製品数が多すぎる

管理する製品数が多すぎると、一つの製品に傾注できるエネルギーが分散することになります。管理すべき製品が増えれば増えるほど、需要予測や商品サイクルの管理などの業務も煩雑かつ困難となり、在庫管理者が行う在庫分析の誤差も大きくなっていきがちです。

そうなると過剰在庫や、在庫不足の発生リスクが増え、在庫のコントロールはいっそう困難になっていきます。加えて、倉庫での配置や割り当てスペースなどの業務も煩雑化し、現場の混乱を招きやすくなります。

経営層と現場の意見の食い違い

過剰在庫は保管にかかるコストがかさみ、廃棄損失リスクも増大するため資金繰りの悪化につながってしまいます。そのため経営層は在庫をできるかぎり最低限に抑えたいと考えがちです。

一方で営業担当者は欠品や在庫僅少などにより顧客からの注文に対応できないことがあれば、販売機会を失い、営業成績に支障をきたしてしまいます。そればかりか最悪のケースではこのようなミスをきっかけに競合他社に乗り換えられてしまう可能性が出てきます。

このように経営サイドと営業サイドで在庫管理をめぐり利害の不一致が生じることがあり、在庫管理者は双方からの板挟みに悩まされることがあるのです。

 

過剰在庫のリスク

在庫の適正化を図るには、“過剰在庫”を減らせばよいと考える人は多いでしょう。実際、過剰在庫は経営の足かせになってしまうことがあります。過剰在庫のリスクについて見ていきましょう。

商品価値の低下

過剰在庫を抱えることで、これを「売りさばいていくためのエネルギー」が必要になってきます。在庫処分セール等をすることでうまく売りさばくことができたとしても、「今、この製品は余っているんだな」と消費者に見定められ、結果として市場での商品価値の低下を誘発することになってしまいます。また、メーカーで過剰在庫が発生した場合は、卸売業者や販売業者に安く買い占められるといったケースも出てきます。

いずれにしても過剰在庫が対外的に知られてしまうことで、足元を見られ、営業面で不利な取引をさせられやすくなってしまうのです。

管理コストの増加

過剰在庫ができると、これを保管するためのスペースも必要になります。加えて在庫管理を適切に行うためのスタッフも必要になります。過剰在庫を抱えることで、こうした在庫の維持・管理に関連する費用が余計にかかってしまうのです。

また、過剰在庫がこの先売れる見込みがなかったり、賞味期限があったりするような商品(不動在庫もしくは不良在庫)とみなされた時点で廃棄処分のためのコストまでかかってしまうことになります。

利益を生まない作業の増加

すでに紹介したとおり、過剰在庫はスペースを設け、スタッフを配置し、維持・保管のための作業を要します。

また、不良在庫となると廃棄処分にかかる料金、配送費、作業費などがかかってしまいます。これらのコストは営業利益に結びつくものではありません。過剰在庫は現金化することが困難であるにもかかわらず、税務会計上、会社の資産とみなされ、課税対象となります。これを避けるためには過剰在庫を不良在庫とみなして決算前に処分のための手続きを行う必要があります。こうしたことから経営サイドにとって過剰在庫は「早く片付けてしまいたいお荷物」となりがちなのです。

収益悪化

当然のことながら、過剰在庫には原材料費や加工費はもちろん、場合によっては外注費用なども発生しています。過剰在庫を廉価販売したり、不良在庫として処分したりすれば、費用を回収できずその分は損失となってしまいます。過剰在庫が増えれば増えるほど会社の持ち出しも増えることになります。

これに加えて過剰在庫を維持・管理するための費用や不良在庫として処分する費用などが加われば、赤字が増えるスピードも加速し、経営はどんどん圧迫されていきます。
(参考)過剰在庫の発生原因や放置するリスク・削減方法を詳しく解説

過剰在庫の発生原因や放置するリスク・削減方法を詳しく解説

 

在庫適正化を実現するためすべきこと

在庫の適正化をより効率的に進めるには、全体を俯瞰し、全体のバランスを考えながら適量を見定めることが重要です。以下に在庫適正化を実現するためのポイントについてご紹介します。

在庫を可視化する

在庫の状況は在庫管理している実務担当者だけが把握しておくべき情報ではありません。経営者、総務・経理担当者、営業担当者など製品に深く関与する部署でもぜひ知っておくべき情報です。

ツールなどを活用して、在庫状況を可視化できるようにして、関係者間で最新の在庫状況がいつでもどこでも迅速・的確かつ手軽に情報を確認できるような体制が作れればベストです。会社全体で連携しながら在庫適正化を推し進めていくようにしましょう。

適正在庫を知る

適正在庫はちょうど売り切れるくらいの量の在庫です。しかし少し予備の在庫がなければ臨時のオーダーに対応できず販売機会を逸してしまいます。

したがって適正在庫は、ちょうど売り切れるくらいの量に予備分を加えた量(=必要最小量)と考えるとよいでしょう。この適正在庫を見極めるには、相当の経験・スキルが求められますが、適正在庫を算出する際の具体的な指標として以下のようなものが使われます。

在庫回転率

在庫が、一定期間(期や月など)のうちで、どのくらい回転したか(=入れ替わったか)を示す数字です。次のような式で算出します。
在庫回転率 (回)= 売上原価 ÷ 平均在庫高
在庫回転率が高いほど売れ行きが高い商品ということになります。過剰在庫は在庫回転率が0に近い状態になります。

在庫回転期間

仕入れた在庫品が全て売れるまでにどれくらいかかるか、その期間を示す指標です。在庫回転期間は、次のような式で算出します。
在庫回転期間 = 在庫金額 ÷ 売上原価(もしくは売上高)
在庫回転期間の値が小さくなるほど、在庫の入れ替わり期間が短いということになります。売れ筋商品は在庫回転期間が小さくなり、過剰在庫となっている商品は在庫回転期間が大きくなります。

交差比率

粗利益率と売れ行きのバランスを見て、儲けがしっかり出ているかそうでないかを判断する指標として使われます。交差比率は、次のような式で算出します。
交差比率 = 粗利益率(%)× 在庫回転率(回)
交差比率が高ければ高いほど、しっかり儲けが出ている成績のよい商品ということになります。

需要予測

自社の製品やサービスが1年間を通して、どれくらい利用され、どれくらいの売上を確保できるかを予測していきます。需要予測は適正在庫を把握するうえで非常に参考になる数字になります。
経験や勘に頼らない需要予測を行う場合、「時系列分析法」、「移動平均法」、「指数平滑法」、「加重移動平均法」などの方法があります。
(参考)需要予測の計算方法とは?Excelを活用した方法やポイントも解説

需要予測の計算方法とは?Excelを活用した方法やポイントも解説

 

在庫削減を実行する

過剰在庫が多くなれば在庫削減を実行する必要があります。在庫削減を図る方法としては以下のようなものがあります。

在庫の種類を減らす

在庫回転率が0に近く、在庫回転期間が長くなっている商品がないか確認してみましょう。在庫している商品の種類が多すぎる場合は特に注意が必要です。該当する商品は在庫処分の検討対象とすべきかもしれません。

ロットを減らす

一度の購入で仕入れるロット(数量)を減らすことで倉庫内の平均在庫数を減らしやすくなります。

たとえば発注の際、1度の注文で10個仕入れる商品があったとします。この商品が過剰在庫になっている場合、発注時の注文数を5や3に減らしてしまうのです。

これは「今後、顧客からそれほどたくさんのオーダーは出ないだろう」という見込みの元で行う判断です。つまり過剰在庫になりがちな商品の在庫量を小さく設定してしまうわけです。

リードタイムを短くする

発注時にリードタイムを短くするという方法もあります。これはすなわち、一度注文してから次に注文するまでの時間(=発注リードタイム)の短縮化を図るということです。

ただし発注リードタイムを短くする場合はロット数を減らすのとセットで行います。これによって倉庫内の平均在庫数の減少につながっていきます。

作業工程を見直す

製造業について言えば、工程が多い商品ほど仕掛品(原材料や半完成品など)の在庫が増えます。これらが増えれば社内の在庫が次第に圧迫されていきます。注文から納品までの工程をできるだけシンプルにして、半完成品や預かり在庫などはできるだけ作らないようにするとよいでしょう。

 

在庫管理・棚卸をカンタンに!「クラウド在庫管理ソフトZAICO」

今回は在庫適正化に向けた取り組み方について紹介しました。資金回収の見込みが立たない過剰在庫は在庫管理コストの増大を招き、やがて資金繰りの悪化、経営の圧迫につながっていきます。逆に、過剰在庫を防ぎ、在庫適正化が実現できれば、経営の安定、利益の向上につながっていきます。

したがって在庫適正化に向けた取り組みは全社一丸となって行うべきことだと言えるでしょう。そのためには経営者、商品管理担当者、総務担当者、営業担当者の間で最新の在庫状況をいつでもどこでもすばやく確認できる体制が求められます。

「在庫の見える化」はアプリを使うと簡単に実現できます。中でも誰でも使いやすい「クラウド在庫管理ソフトZAICO」がおすすめです。

ZAICOでは製品写真やロット番号の収載されたバーコード、QRコードなどの画像情報をもとに入出荷の管理、倉庫保管などを行っていきます。登録情報はクラウドで行われるので、複数人が同時にスマホやパソコン、タブレットで追跡・閲覧することも可能となっており、リモートでの管理にも適しています。実際にZAICOを使うことで、「過剰在庫を大幅に減らせた」というお声をいただいております。

 

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