棚卸しとはある一時点の在庫数量を確認し、在庫金額を確定することです。
決算業務における「利益」を正確に把握するために、
正しい在庫金額を確定するということは非常に重要です。
この記事では、棚卸しの目的をやさしく、わかりやすく解説し、棚卸しを正しく行う方法を具体的にお伝えしたいと思います。
棚卸しをする現場メンバーが、棚卸しの目的とそれに基づいた正しい棚卸方法を理解すれば、
棚卸し精度も棚卸し作業の効率も大幅によくなるはずです。
ぜひ実際の棚卸し現場で参考にしてください!
①棚卸しの目的:ちゃんとやらないと税務調査で追徴課税!?
棚卸しとはある一時点の在庫数量を確認し、在庫金額を確定すること、と冒頭でも説明しました。
在庫金額を確定すると、どんな良いことがあるのでしょうか?
決算で用意する損益計算書における「利益」の中でも大きな柱となる
「売上総利益」の算出方法から「棚卸し(在庫金額を確定する作業)」が果たす役割を確認してみましょう。
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- 売上総利益 = 売上 ー 売上原価
- 売上:商品販売やサービス提供などによって得た代金の合計額
- 売上原価:当期に売れた商品の原価
期首棚卸高(前期末の在庫金額) + 仕入高 - 期末棚卸高(当期末の在庫金額)
そうです。ここで出てくるのが在庫金額です。
売上原価を確定するために、在庫金額が必要だったのです。
つまり「売上総利益」を確定させるために必要な、
売上原価を正しく知るために行う作業が「棚卸し(在庫金額の確定)」なのです。
棚卸しが正しく行われていないと、利益も正しく算出できません。
税務調査で、「在庫金額を間違え、利益を不当に下げている」と税務署に判断されれば、
追徴課税(ペナルティー)を受ける可能性もあるので要注意です。
②棚卸しのやり方:棚卸しには2つの方法があります
棚卸しは利益を左右する重要な作業だということがわかりました。
ここでは、その棚卸しのやり方2つをお伝えします。
(1)在庫一覧を元に棚卸しをおこなう
メリット:在庫一覧に載っている在庫はある可能性が高いため、短時間で進められる。
デメリット:在庫一覧に載っていない在庫を漏らす可能性が高い。
(2)現場の在庫を元に棚卸しを行う
メリット:在庫一覧が不要。
デメリット:数え漏れや数え忘れに気付きにくい。
一般的な方法は効率的に行える(1)ですが、
現場の物品を漏れなく確認するには(2)の方法が有効です。
それでは具体的な方法を見ていきましょう。
(1)在庫一覧を元に棚卸しをおこなう
- 在庫一覧を用意する
物品名(品番)、物品の保管場所、この2つを必ず一覧に入れておきましょう - 対象の物品を探す
- 対象の物品数を数える
- 在庫一覧に数を書く
(2)現場の在庫を元に棚卸しを行う
- 棚卸結果を書く表を用意する
- 物品名を紙に書く
- 物品数を数える
- 数えた数を紙に書く
- 数え終わった物品に目印をつける
いずれの方法も2以降を繰り返せば棚卸終了です。
状況に合った棚卸し方法を探しましょう。
③棚卸しミスを防ぐ:”棚卸しミスあるある”のご紹介とその対策!
棚卸しは在庫を数えるだけというとても単純な作業ですが、必ずミスが起こります。
当然、ミスがあれば棚卸しの目的である在庫金額にもズレが生じますし、手戻りで余計に時間がかかります。
棚卸しで大事なのは「早く正確に」です。
これを実現するためにも、事前に対策を立ててルールを徹底しましょう。
- 数え漏れ、数え間違い
- 数え方のルールを決める。
- 棚にあるものは全て棚から下して数える。
- 段ボール箱やビニール袋などの梱包をといて数える。
- 表記ミス
- 商品名や品番など事前にわかる情報は棚卸一覧に事前に印字しておく。
- 誤品カウント
- 素材違いなど、似ている物品、品番などがあることを認識できるよう、写真などで表記しておく。
- ダブり
- 担当者ごとにエリアを決める。
- 棚卸しの進め方を決める。「棚の最上段の左から右へ、最後は最下段の右が終着」など。
- 数え終わったら「棚卸済」の目印を付ける。
- 読取ミス
- 間違い易い数字「0と6」「1と7」「3と8」は書き方のルールを作る
番外編ですが、棚卸し中に破損した物などを見つけても、
勝手に廃棄せずに在庫品として数えることも徹底しましょう。
④棚卸し事前準備:事前準備で大きく変わる棚卸し作業
棚卸しは、当日いきない始めるとただただ時間がかかり疲弊するものです。
ただ、これは事前準備で大きく変わります。
ただでさえ、棚卸しの時間を確保するのが大変なのに事前準備なんて、、、
と言わず、一度この事前準備を試してみてください。効果あります!
- 整理
棚卸作業は、会社にある在庫を全部数えます。
毎年毎年、同じ物を同じように何回も数えていませんか?
不良在庫も長期滞留在庫も「整理」しましょう。
「なんだかよくわからない不明品」も棚卸しでよく出るお困りごとです。
こちらも整理してください。
これで数える数、悩む時間が少なくなります。
- 整頓
棚卸作業当日出てくるお困りごとで多いのは「在庫がどこに置いてあるかわからない」です。
同じ商品は同じ場所に置く、記録上の置き場所と実際の現物の置き場所を一致させるなど、
在庫品の所在を明確に「整頓」すれば、物を探す時間を減らせ、 さらに漏れやダブりも減らすことができます。
日々の業務の中でも整理整頓を意識しておけば、わざわざ棚卸し前に時間をとる必要もありません。
日々の在庫管理を見直すのも大事ですね。
企業によっては、全社員総出で複数日かけて棚卸業務をしますよね。
棚卸しは神経も使うし、人的コストもかさみます。店舗を閉めれば利益にも直結します。
少しでも早く正確に行うことが棚卸しの大事なポイントです。
日々の業務から棚卸しに向けて準備をして、
スムーズでストレスフリーな棚卸し当日を迎えられれば最高ですね。ぜひ参考にしてみてください。
この記事の監修:在庫管理アドバイザー 岡本茂靖
これまでに在庫管理の改善・生産性向上を目指す様々な企業を支援。
豊富な在庫管理・生産管理の現場経験を活かした
実践的でわかりやすい説明、仕組み作りが得意。