棚卸と聞くと、「面倒な作業」「時間がかかる」といったネガティブなイメージを持たれる方も多いかもしれません。
しかし、棚卸は単に在庫の数量を数えるだけの作業ではなく、企業の経営や業務、顧客サービス、リスク管理など、あらゆる面に多くのメリットをもたらす重要な業務です。
「なぜ棚卸が必要なのか」という根本的な疑問に対して、経営、業務、顧客サービス、リスク管理の各視点から棚卸のメリットを深掘りします。
棚卸には多くのメリットがある
棚卸とは、倉庫や店舗に保管されている在庫の数量を実際に数えて確認し、帳簿上の数量と照合する作業のことです。
棚卸の定期的な実施により、帳簿と実在庫のズレを把握し、正確な在庫状況を維持できます。
多くの企業では、決算期に合わせて年に1回から2回実施するのが一般的です。
正確な在庫情報は、適切な経営判断の基礎となり、無駄なコストの削減や売上機会の最大化に欠かすことはできませんし、現場レベルでも作業効率の改善や従業員の意識向上など、さまざまな棚卸にはメリットが期待できるでしょう。
棚卸のメリット:経営・財務面
企業経営において、正確な財務情報の把握は意思決定の土台となります。
棚卸のメリットの中から経営・財務面にもたらすメリットを見ていきましょう。
正確な財務諸表を作成できる
棚卸の大きな目的は、正確な財務諸表の作成にあります。
企業の利益を計算するためには、売上原価を確定させる必要がありますが、その算出に不可欠なのが期末時点での正確な在庫金額です。
売上原価は「期首在庫棚卸高 + 当期仕入高 - 期末在庫棚卸高」という計算式で求められます。
期末に残っている在庫の金額(期末在庫棚卸高)が不正確だと、計算される利益も誤ったものになってしまいます。
棚卸によって正確な在庫数を確定させることは、適正な利益計算と納税、ひいては企業の社会的信用を守るために不可欠です。
キャッシュフロー改善のヒントを発見できる
棚卸は在庫として眠っているお金を見つけ出し、キャッシュフローを改善する絶好の機会です。
棚卸を行うことで、長期間出荷されていない滞留在庫や、売れる見込みのない不良在庫が明確になります。
帳簿上では資産として計上されていても、実際に売れなければ現金は入ってきません。
それどころか、保管料や管理コストがかかり続け、会社のキャッシュフローを圧迫し続けます。
棚卸を通じてこれらの在庫を発見し、値下げ販売で現金化したり、廃棄して保管コストを削減したりといった判断が可能になります。
仕入れ戦略や品揃え戦略の見直しに活かせる
棚卸のデータは、商品ごとの在庫回転率や販売動向を分析する貴重な情報源です。
在庫回転率とは、一定期間に在庫が何回入れ替わったかを示す指標で、数値が高いほど効率的に在庫が動いていることを意味します。
棚卸で実在庫を正確に把握することで、在庫回転率を正しく算出でき、どの商品が売れ筋でどの商品が死に筋なのかの把握が可能です。
分析結果をもとに、仕入れ数量の調整や商品ラインナップの見直しを行えば、売れる商品に経営資源を集中させ、収益性を高められます。
棚卸のメリット:業務面
棚卸は現場の負担の大きい作業ですが、適切な実施とフィードバックにより、日々の業務効率を向上させる効果があります。
棚卸のメリットの中から業務面でもたらすメリットを解説します。
倉庫スペースを有効活用できるようになる
日々の業務に追われていると、とりあえず空いている場所に荷物を置くことが常態化し、保管効率が悪化しがちです。
しかし、棚卸のタイミングで全商品をチェックすることで、無駄なスペースの使い方に気づけます。
また、滞留在庫や不良在庫の処分・整理によって、倉庫内には新たな空きスペースが生まれます。
スペースに余裕ができれば、新商品の保管場所を確保したり、作業動線を改善したりすることも可能です。
倉庫内の整理整頓が進み作業効率がアップする
棚卸の準備段階では、在庫を数えやすくするために倉庫内の整理整頓が必要です。
商品を適切な場所に配置し直したり、ラベルを貼り直したりする過程で、自然に倉庫内の環境が改善されます。
整理整頓された倉庫では、必要な商品をすぐに見つけられるため、日常のピッキング作業や入出庫作業のスピード向上が期待できるでしょう。
また、きれいで使いやすい倉庫環境は、従業員のモチベーション向上にも寄与します。
従業員の在庫管理意識が向上する
意外に見落とされがちなのが、従業員の在庫管理意識の向上というメリットです。
普段何気なく扱っている商品も、棚卸を通じて「これは会社の資産である」という認識が強まります。
また、帳簿と実在庫のズレを目の当たりにすると、日々の入出庫記録の正確性がいかに重要かも実感できるでしょう。
こうした気付きにより、日常業務での在庫精度の向上や業務改善という形で組織全体に良い影響を及ぼすことが期待できます。
棚卸のメリット:顧客サービス面
棚卸による在庫管理の精度向上は、最終的には顧客満足度の向上にもつながります。
棚卸のメリットの中から顧客サービス面にもたらすメリットを解説します。
欠品による顧客の買い逃しを防げる
棚卸で在庫の実態を正確に把握できれば、適切なタイミングでの発注が可能です。
これにより、帳簿上は在庫があるはずなのに実際には欠品していた、という状況を防いで、顧客が欲しいときに商品を提供できる体制を整えられます。
特に人気商品や季節商品では、欠品による販売機会の損失は大きく、顧客の信頼を失うことにもつながりかねません。
定期的な棚卸で在庫精度を高めることで、顧客の買い逃しを防ぎ、「いつでも欲しい商品が手に入る」という安心感を提供できます。
在庫の精度が高まり問い合わせ対応がスムーズになる
顧客から「この商品は在庫がありますか」と問い合わせを受けたとき、正確な在庫情報があれば即座に回答できます。
棚卸を定期的に実施し、在庫データの精度を高めておくことで、顧客を待たせることなくスムーズな対応が可能です。
逆に、在庫情報が不正確だと、「在庫あり」と回答したのに実際にはなかった、あるいはその逆のケースが発生し、顧客の信頼を損ねてしまいます。
棚卸による在庫精度の向上は、顧客対応の質を高め、企業の信頼性向上につながる重要な要素です。
商品の鮮度・状態が改善する
棚卸は、単に数を数えるだけでなく、商品の「品質」をチェックする機会にもなります。
特に食品や化粧品のように消費期限がある商品や、アパレルのように流行り廃りがある商品などでは、棚卸時の品質チェックは非常に重要です。
棚卸を通じて問題のある在庫を早期に発見できれば、謝って顧客に販売してしまうリスクを防げます。
常に良質な状態の商品を届けることは、クレームの削減と企業イメージの維持につながります。
棚卸のメリット:コンプライアンス・リスク管理面
棚卸は、不正の発見や品質トラブルの予防、監査対応など、コンプライアンスとリスク管理の観点からも重要です。
コンプライアンス・リスク管理面で、棚卸がもたらすメリットを解説します。
盗難・紛失・不正持ち出しなどを早期に発見できる
棚卸によって帳簿と実在庫を照合することで、在庫の不一致を発見できます。
数量が合わない場合、記録ミスの可能性もありますが、盗難や不正な持ち出しが原因である可能性も否定できません。
定期的な棚卸の実施により、こうした不正行為を早期に発見し、被害を最小限に抑えることが可能です。
また、棚卸が定期的に行われることが従業員に周知されていれば、不正行為に対する抑止効果も期待できるでしょう。
不正の早期発見は、企業の資産を守るだけでなく、健全な職場環境の維持にもつながります。
品質劣化や期限切れなどのトラブルを未然に防げる
顧客サービス面とも関連しますが、品質管理の観点からも棚卸は重要です。
特に化学薬品や医薬品、食品などを扱う場合、期限切れの商品を誤って出荷・使用してしまうことは、法的な問題や重大な健康被害に発展するリスクがあります。
棚卸の際に、製造年月日や使用期限をリストと照合することで、期限切れ間近の在庫を廃棄処分するなどの適切な処置が可能になります。
安全・安心な商品提供を継続するためには、定期的な現物確認が欠かせません。
監査対応がスムーズになる
上場企業や一定規模以上の企業では、決算時に外部監査や内部監査が必要です。
適切に棚卸を実施し、在庫データを正確に管理していれば、監査時に必要な資料やエビデンスをスムーズに提出できます。
一方、棚卸が適切に行われていない場合には、監査で指摘を受けたり、追加の調査が必要になったりして、対応に時間とコストがかかることになるでしょう。
適切な棚卸の実施は企業の透明性を高め、外部からの評価を安定させる上で大きなメリットとなります。
棚卸はメリットだけではなく注意点もある
ここまで棚卸の多くのメリットを紹介してきましたが、実施にあたってはいくつかの注意点もあります。
まず、棚卸には多くの時間と人手が必要です。
通常業務を止めて全従業員で対応するケースも多く、その間は営業活動や出荷業務がストップしてしまいます。
また、棚卸の精度を保つためには、従業員への適切な教育とマニュアル整備が必要です。
数え方のルールが統一されていなかったり、記録方法が曖昧だったりすると、かえって誤差が生じてしまいます。
物理的な負担も見逃せません。
倉庫内を歩き回って在庫を数える作業は体力を使い、高所の在庫確認には危険も伴います。
こうした注意点を理解した上で、効率的な棚卸の方法を模索することが重要です。
システムの活用や作業の標準化など、棚卸の負担を軽減しながらメリットを最大化する工夫が求められます。
棚卸のメリットを効率的に享受するならzaico
棚卸には経営判断の精度向上から現場の業務改善、顧客サービスの向上、リスク管理の強化まで、さまざまなメリットがあります。
しかし、従来の人手に頼ったアナログな方法では、棚卸作業に多大な時間と労力がかかり、メリットを十分に享受できないケースも少なくありません。
棚卸の効果を最大化するには、正確性と効率性を両立させることが不可欠です。
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