在庫を持つ企業が行う業務のひとつに「棚卸」があります。
棚卸とは、会社が保有している在庫数を実際の現場で数える作業のことです。
多くの企業は決算前の期末に棚卸を行いますが、期末以外にも在庫の整理を兼ねて週1回や月1回など、高い頻度で棚卸を行う企業もあります。
棚卸を効率的に行うための手順や押さえるべきポイント、棚卸後の処理までをステップ別に確認していきましょう。
目次
棚卸の手順書:基本の4ステップ
まずは棚卸をどんな手順で行うか確認していきましょう。
「事前準備」→「在庫数を数えて記録」→「集計」→「分析と数量確定」とステップに分けて見ていきます。
ステップ1:棚卸の事前準備
棚卸をスムーズに正確に行うには、事前の準備が重要です。
混乱やミスを最小限に抑える仕組みを準備しておくことで、棚卸の精度は格段に上がります。
まずは棚卸の準備のポイントを見ていきましょう。
- 棚卸の責任者を決める
- 棚卸を行う範囲を決め、担当者を割り振り「棚卸計画書」を作成する
- 棚卸の行い方やルールをまとめた「棚卸マニュアル」を作成する
- 棚卸で利用する棚卸原票と棚卸集計表、文房具類を揃える
- 棚卸がスムーズに行えるよう、現場の整理整頓を行う
- 数量が多いものは重量換算法を用いる
ステップ2:在庫数を数えて記録
準備が整えば、棚卸を開始します。
準備さえできていれば、棚卸の作業は比較的簡単に単純化して進めることができます。
- 責任者がその日行う棚卸の範囲や担当者確認を行い全員に明確に伝える
- 作業ペアの一人が在庫の数を数える
- もう一人は棚卸原票に在庫の品名、数量、保管場所を記入する
- 数え間違いや記入漏れ、また読みにくい字が無いかペアでチェックする
- 問題がなければ次の在庫品のカウントへ進む
ステップ3:棚卸集計表に集計
棚卸原票をもとに棚卸集計表に集計していきます。
棚卸集計表は、帳簿上の在庫数と棚卸原票に記入した棚卸数、その差異であるロス数とそのロス率を記録できるようにしておくとその後活用しやすい表になります。
棚卸集計表の見本を参考に、独自で管理したい項目などを追加して作ってください。
ステップ4:差異分析と数量確定
集計表を確認し、帳簿上の在庫数と棚卸数に差異がないかどうかを確認します。
もし差異があれば、棚卸で数えた数量に合わせて帳簿を修正します。
この差異が起こった原因の分析を必ず行い改善策を検討しましょう。
棚卸の手順の中で重要な準備のポイント
さて、棚卸の手順、全体のステップがわかったところで、押さえておくべきポイントを詳しく見ていきましょう。
棚卸はの事前準備ができているかどうかが成功の鍵を握ります。
棚卸の事前準備段階で確認しておくべきポイントについて確認していきましょう。
責任者を決める
責任者は棚卸の知識や経験があり、他の在庫管理業務や在庫品や在庫品を保管する場所についてもよく理解している人が適しています。
例えば、倉庫の中の配置や商品の理解ができていなければ、棚卸に漏れやダブりが発生します。
また、商品に破損が起きているかどうか、などの判断もできると棚卸の中で在庫の状態を正しく把握していくことができます。
責任者が事前の準備をきちんと行い、作業者に正しく伝達することが棚卸の成功の鍵となります。
棚卸計画書を作る
棚卸計画書を作成し作業範囲、在庫の保管場所毎の担当者割り、タイムスケジュールなどをまとめましょう。
作業は2人1組で行えるよう割り振るといいかもしれません。
ペアで作業することで数え間違いなどのミスを防げたり、不正を防止できます。
また、場所が広く一度で終わらない場合や、営業時間外で行うなど時間の縛りがある場合は、複数日程に渡って実施することになります。
事前に計画を作ることで作業者が混乱することなく、漏れやダブりなく正確に棚卸を進めることができるようになります。
棚卸マニュアルを作る
当日の作業者の詳しい棚卸手順をマニュアルとしてまとめましょう。
ペアで作業する時のそれぞれの役割と手順、品番や商品名の確認方法などを丁寧に記載しましょう。
また、後から誰が見ても読み間違いが起こらないよう0と6、1と7などの書き方のルールも決めておくと良いでしょう。
事前に説明会などの機会をもうけて、作業者にマニュアルを説明しておけば、限られた時間での棚卸もすぐに着手できます。
整理整頓を行う
棚卸でよく出てくる問題が以下のようなものです。
- 商品があちこちに散らばっている
- 他の商品と混ざってしまっている
- 商品が棚の奥や下に隠れてしまっている
このように整理整頓ができていないことが原因で数え間違いが起こったり、数え漏れが起きてしまいます。
棚卸のロス対策のためにも常日ごろから整理整頓を徹底しましょう。
整理整頓された現場は棚卸を正確に行えるだけでなく、安全性や日ごろの在庫業務の生産性を上げることにも繋がり、良い影響を生み出します。
重量換算法を使う
ネジなど細かくて数量が多い物を全て人が数えるとなるととても大変です。
このような場合、全てを数える必要はありません。
重量換算法という方法を使って効率的に進めましょう。
重量換算法は全ての個数を数えるのではなく、総重量と1つ当たりの重量から個数を導く方法です。
総重量 ÷ 1個の重量 = 数量
上記で割り出した数を棚卸の数量としていきます。
例)1個当たりのネジの重さが5g、在庫のネジの総重量が5,000g
5,000g ÷ 5g = 1,000個、在庫数量は1,000個です。
重量換算法を適切に利用できれば時間短縮ができますし、間違いも起こりにくくなるでしょう。
棚卸を行う目的
改めて、棚卸を行う目的についてふたつの視点で確認していきましょう。
目的が分かれば、棚卸のモチベーションも精度も上げることができます。
作業者にも何のために棚卸を行うかを伝え、全員で目的意識を持って取り組み効率的な棚卸を行いましょう。
利益を確定するため
まず棚卸の一番重要な目的である「利益確定」についてお伝えします。
棚卸の主な目的は会社の資産を把握し、売上や利益を確定することです。
在庫数量を帳簿上だけで管理するのではなく、棚卸でその時点での正しい在庫数量を確定させることで、売上原価を正しく算出でき利益を確定することができます。
会社の利益を確定することができる、これが棚卸が重要である理由であり、大きな目的といえるでしょう。
棚卸は数を数えて記録するという単純作業ではありますが、数え漏れやダブりなどのミスがあると、会社の利益が変わってしまう可能性がある重要な作業であることを作業者が自覚し取り組むと良いでしょう。
在庫管理方法の見直しのため
棚卸は実際にある在庫品を全て人が見る貴重な機会です。
この時にその在庫品が壊れていないか、劣化していないか、などの品質を実際に確認したり、その在庫品がどれくらい滞留しているかを把握することができます。
また、帳簿数量と棚卸数量の差異も分かります。
このような品質や滞留状態、在庫差異がなぜ起きるのかを在庫がある現場の状態から分析してみましょう。
例えば、棚の奥に先に入った在庫品が入りっぱなしで、先入後出しの状態であることに気づければ、在庫品の滞留時間を短くするため先入先出方式に変更する提案ができるかもしれません。
このように日ごろの在庫管理方法の見直しにも棚卸は役立ちます。
棚卸を行わないとどうなる?
棚卸を行わないとどうなるのでしょうか。
実は棚卸は法定作業ではないため、会計として義務ではないのです。
ただ、帳簿在庫と実地の数量が合わないまま利益を確定してしまうと、会社の利益が正しく算出できず、誤った経営判断の元になります。
また、本来在庫があるのに数え漏れていて、その数量が膨大であった場合、利益もそれに基づいて計算される法人税も大幅に間違ってしまうというケースが想定されます。
棚卸は会計上の問題だけではありません。
実際に在庫品を確認する機会がなければ、在庫の状態や差異分析を行えず在庫管理の改善も行えません。
正しい経営判断を行えるようにするためにも、またより良い在庫管理の方法を検討するためにも、棚卸は少なくとも決算前の年1回は行うようにしましょう。
棚卸の効率化に役立つクラウド在庫管理システムzaico
棚卸は在庫を持っている企業であれば必ず行うべき作業です。
しかし、棚卸は多くの人手や時間が必要でコストがかかるものでもあります。
また、棚卸は人的ミスも起こりやすいため工夫が必要です。
「クラウド在庫管理システムzaico」を使えば作業者の負担と作業ミスを軽減でき、適切な在庫管理はもちろん、棚卸の効率化につながります。
また、zaicoはスマホがあれば棚卸や在庫管理に慣れていない現場の方でも簡単に棚卸を行うことができるので、導入のハードルも高くありません。
適切な棚卸を実現したい、棚卸の方法や手順を見直したいとお考えであれば、お気軽にzaicoにご相談ください。