棚卸資産回転率とは?計算方法や経営分析方法を分かりやすく解説

棚卸資産回転率という言葉を聞いたことはあるでしょうか。

棚卸資産がどのくらい効率的に回っているかを計る指標で、会社経営をする上では非常に大切なポイントとなります。

なんとなく言葉からイメージを持っていても、具体的にどのように分析できるものなのか、回転率はどの程度が望ましいのかまでを理解するのは難しいです。

この記事では棚卸資産回転率や棚卸資産回転期間について解説するとともに、分析の方法や具体的な活かし方を解説いたします。

 

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棚卸資産とは

棚卸資産(たなおろししさん)とは、販売目的で保有している商品・製品・原材料・仕掛品の総称のことで、いわゆる「在庫」と呼ばれます。貸借対照表の借方項目である資産の部の流動資産に含まれます。

棚卸資産(在庫)は、顧客に販売されることで売上として収益をあげるものですが、会社を経営する上では、「売れない商品を持たず、売れる商品を効率よく販売している」状態が理想です。

棚卸資産回転率とは、棚卸資産を効率よく販売できているかを測るための指標です。

 

棚卸資産回転率とは

棚卸資産回転率とは、棚卸資産をどのくらい効率よく販売できているかを測るための指標で、製造した製品や仕入れた商品が特定の期間に何回販売されているかを表します。

単位は「回転」で、特に期間の指定がない場合は1年間に何回転するかを意味します。

また棚卸資産回転率は、在庫回転率とも呼ばれます。

回転率は高いほど製品や商品がよく売れていると言えます。逆に低いほどを製品や商品は売れていないことになります。

棚卸資産回転率が低い、つまり売れていない商品は保管し続けるためのコストが発生するだけでなく、商品が劣化したり有効期限をすぎてしまうとそもそも販売することができなくなり、廃棄するためのコストもかかる場合があります。

では、実際にどのように計算するのでしょうか。

棚卸資産回転率の計算方法

【計算方法】
棚卸資産回転率 = 売上高 ÷ 棚卸資産の金額(期末・期首の平均)


ここで「棚卸資産」は、売上高を計算する最初(期首)と最後(期末)の時点での棚卸資産の金額の平均値を使うことが一般的です。

たとえば、次のようなケースを考えてみましょう。

具体例

A社

売上高:5,000万円

期首商品棚卸高:600万円

期末商品棚卸高:400万円

 

B社

売上高:4,500万円

期首商品棚卸高:400万円

期末商品棚卸高:200万円

このような情報が決算書から分かったとします。この時の棚卸資産回転率は以下のように計算します。

A社の棚卸資産回転率 = 5000万円 ÷{(600万円 + 400万円)÷ 2}= 10回転

B社の棚卸資産回転率 = 4500万円 ÷{(400万円 + 200万円)÷ 2}= 15回転


回転率が高いほど製品や商品を効率よく仕入れて売っていると言えるので、このケースではB社が棚卸資産(在庫)を効率よく販売できているといえます。

ただし、回転率が高くなればなるほど、在庫は十分でなく「在庫切れ」が発生する可能性があります。「在庫切れ」が発生すると販売機会の損失に繋がります。

つまり棚卸資産回転率は高ければ高いほど良いというわけではなく、適正に保つことが大切です。

 

棚卸資産回転期間とは

棚卸資産回転率に関連する指標として棚卸資産回転期間があります。

棚卸資産回転期間は、棚卸資産が一回転するのにかかる期間を表しています。

簡単に言うと、在庫をすべて販売するのにどの程度の期間が必要かを表します

単位は期間なので「年」「月」「日」になります。

棚卸資産回転期間の計算方法

【計算方法】

棚卸資産回転期間(日)= 365(日)÷ 棚卸資産回転率

補足:365日を1年または12ヶ月に置き換えることで、単位がそれぞれ「年」や「月」になります。

 

上記のケースで棚卸資産回転期間を求めてみましょう。

A社の棚卸資産回転期間 = 365日 ÷ 10回転 = 36.5日

B社の棚卸資産回転期間 = 365日 ÷ 20回転 = 18.25日

このように、A社では棚卸資産が一回転するまでに36.5日かかり、B社では18.25日かかることが分かります。

B社のほうが棚卸資産回転期間が短いので、短期間で在庫が売れていることになり良い傾向といえます。

特に管理している在庫が食品や原材料、衣類などの場合、回転期間が長いと保管期間が長くなり、劣化や破損の原因になることもあるため回転期間は短い方が望ましいです。

 

棚卸資産回転率での経営分析方法

一般的に棚卸資産回転率が高いほど、在庫の製造・仕入れから販売までの期間が短くなるので、在庫を効率よく管理できているといえます。ただ数値だけではその数値が適切な値なのか、高いのか低いのかを判断することはできません。

棚卸資産回転率から在庫が適切に管理できてるか判断するには、次のような方法があります。

  1. 業界別平均と比較する
  2. 競合他社と比較する
  3. 自社の直近3年間と比較する。

棚卸資産回転率、回転期間の業界平均を把握する

業界・業種別の棚卸資産回転率と棚卸資産回転期間は以下の通りです。

経済産業省「中小企業実態基本調査」の数値から計算しています。

※棚卸資産の金額は平均を取らず、回転率は小数点第2位を四捨五入、回転期間は小数点以下を四捨五入)

業界・業種 回転率 回転率
建設業 11.9回 31日
製造業 10.5回 35日
情報通信業 24.1回 15日
運輸業・郵便業 297.3回 1日
卸売業 17.8回 21日
小売業 13.4回 27日
不動産業・物品賃貸業 3.7回 99日
学術研究・専門技術サービス業 27.8回 13日
宿泊業・飲食サービス業 79.4回 5日
生活関連サービス・娯楽業 112.9回 3日
サービス業(上記以外) 82.6回 4日

【出典】経済産業省「中小企業実態基本調査」の平成30年度確報より


上記の表を見てみると、棚卸資産回転率が高い業種として運輸業やサービス業があります。

これらの業種は、主な売上の内訳が従業員や設備の稼働によるもので、棚卸資産自体をあまり持たないためです。

反対に回転率の低い業界は、不動産業や製造業、建設業などがあります。これらの業種は、棚卸資産自体の金額が高く一度の販売に時間をかけるためです。


このように業界別の棚卸資産回転率を確認することで、大まかな傾向を把握することができます。しかし、個別の企業を計る目安としては不十分な場合が多いです。

なぜなら、同じ業界でも取り扱っている棚卸資産の種類によって、回転率が大きく違うからです。


そのため、業界別平均値で大まかな傾向を把握しながらも、

  • 取り扱っている棚卸資産の種類が似ている同業他社の数値と比較する(相互比較分析)
  • 自社の直近の数値で比較する(期間比較分析)

などが現実的です。

パターン別に分析する

業界や同業他社、自社の過去データなどと棚卸資産回転率を比較すると、以下の三つのパターンに分けることができます。

  • 売上高や棚卸資産の金額は規模は違うが棚卸資産回転率が同じ
  • 売上高が違うことで、棚卸資産回転率に差が出る
  • 棚卸資産金額が違うことで、棚卸資産回転率に差が出る

 

棚卸資産回転率が同じ場合は規模に注目する

期間比較分析(例えば、自社の前年度と今年度)で、売上高や棚卸資産の金額が変化したのに、回転率や回転期間が同じ場合

棚卸資産(在庫)の管理状況は変化していないが、会社の規模が拡大(縮小)した

ということになります。

これでは状況が変わっていないことは分かりますが、回転率や回転期間の数値が適切なのかが分かりません。そのため相互比較分析を行い、業界の平均や同業他社と比較する必要があります。

それらと比較しても回転率が近ければ標準的であると考えられますが、そもそも業界屋同業他社の数値が低い可能性もあるため、在庫管理や生産管理に改善の余地はないか検討する必要はあります。

 

棚卸資産回転率の差が出た場合①(売上高の差に注目する)

棚卸資産の金額が同じだったとしても、売上高に差が出れば棚卸資産回転率に差が出ます。

この場合、売上高が大きいほど棚卸資産回転率が高くなるといえます。

このように売上高による回転率に差が出る場合

  • 販促施策の変化(値引きやリベートなど)
  • 取り扱う棚卸資産の種類の変化
  • 取り扱う棚卸資産の売れ行きの変化

などに注目してみましょう。

例えば、セールなどで値引き施策を多く行っていれば売上高の金額は低くなり、棚卸資産回転率も下がります。

取り扱う在庫の種類が変われば、全体の在庫の金額が変わらなくても回転率は変化します。

在庫の全体的な売れ行きが悪くなれば売上高が低下し棚卸資産の回転率は下がります。

このような変化が起きた場合は、取り扱っている棚卸資産そのものの調査や販売方法について調査が必要です。

 

棚卸資産回転率の差が出た場合②(棚卸資産の差に注目する)

売上高が同じだったとしても、棚卸資産の金額に差が出れば棚卸資産回転率に差が出ます。

この場合、棚卸資産の金額が小さいほど棚卸資産回転率が高くなるといえます。

このように棚卸資産の金額による回転率に差が出る場合

  • 在庫の管理体制そのものの変化

に注目してみましょう。

例えば、毎年の売れる金額が変わらない商品があった場合、製造や仕入れを減らし必要最低限の在庫量だけ確保するようにできれば、棚卸資産回転率は高くなります。

逆に製造や仕入れを増やしてしまうと、棚卸資産だけが増えて棚卸資産回転率は低くなります。

このような変化が起きた場合は、生産管理、在庫管理、物流管理などを調査する必要があります。

 

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