在庫管理を担当しているものの、「何から考えればいいのか分からない」「とりあえず数を合わせる業務になっている」と漠然になってしまっている場合もあるかもしれません。
在庫管理は、単なる在庫数チェックや発注作業ではなく、会社の利益やキャッシュフロー、現場の生産性にまで影響を与える重要な業務です。
だからこそ、作業の前提となる「在庫管理の考え方」を理解することが欠かせません。
在庫管理において考え方が重要な理由と、基本的な在庫管理の考え方を、財務・管理手法・現場オペレーションの視点から解説します。
在庫管理の考え方とは
在庫管理の考え方とは、在庫を適切な状態で保持し、必要なときに必要な量を供給できる仕組みを構築するための思考の枠組みのことです。
在庫は、多く持っていれば「欠品」を防げますが、持ちすぎると「過剰在庫」となり、資金繰りを悪化させます。
このトレードオフ(=両立し得ない関係)をコントロールし、「多すぎず、少なすぎない」バランスを維持し続けることが、在庫管理の最大のミッションです。
在庫管理担当者は、作業の背後にある「なぜそうするのか」という考え方を理解し、状況に応じて柔軟に判断できる力を身につけることが求められます。
在庫管理の考え方が重要な理由
現場の担当者が「考え方」という軸をしっかり持っていないと、時間の経過とともに在庫管理は形骸化していきます。
在庫管理の考え方が重要な理由を見ていきましょう。
目的が不明確なまま在庫管理が作業化してしまうから
確固たる考え方がないと、在庫管理は単なる「モノを数えて記録する作業」になってしまいます。
例えば、毎日の在庫チェックを「上司に言われたからやる」という意識で行っていると、数字のズレを見つけても「帳簿を修正して終わり」という対応になりがちです。
しかし、本来は「ズレの原因を特定し、資産を守ること」が重要なはずです。
また、目的意識が欠如すると、無駄なデータを記録し続けたり、本来不要な移動作業を繰り返したりと、非効率な業務が蔓延します。
考え方を理解していれば、「この作業は利益につながっているか?」と自問自答でき、無駄な作業を削減する視点が生まれるでしょう。
判断基準がなく担当者の感覚に依存してしまうから
在庫管理の現場で危険なのは、「なんとなく足りない気がするから発注しておこう」というような担当者の経験や勘への依存です。
明確な考え方や基準がない場合、発注数や保管場所の決定が個人の感覚に委ねられます。
ベテラン社員であれば、それで上手くいきますが、新任担当者には勘所がありません。
その結果、過剰在庫によるスペースの圧迫や、突然の欠品によるクレーム対応などのトラブルが発生します。
「なぜその数を発注したのか」を説明できる基準を持つためには、在庫管理のセオリーに基づいた考え方が不可欠です。
業務改善や仕組み化につながらず同じ問題を繰り返してしまうから
在庫管理の業務においてトラブルはつきものですが、考え方を持っていればトラブルを改善のチャンスに変えることも可能です。
一方で、考え方が定着していない現場では、問題が起きるたびに対症療法的な処置が行われます。
例えば、欠品が起きた際に「急いで発注する」だけで終わらせてしまうと、またいずれ同じ理由で欠品が発生するでしょう。
「なぜ欠品したのか?」という根本的な課題に考えが至れば、仕組みそのものを見直すことができます。
同じ問題を繰り返さず、業務品質を高めていくためには、土台となる考え方が必要です。
在庫管理の考え方:財務・会計の観点
在庫管理を一段高い視点から捉えるために、「お金」の動き、つまり財務・会計の観点から考えてみましょう。
在庫を単なる「棚にあるモノ」としてではなく、「資産」として見る意識が重要です。
財務・会計の観点から在庫管理の考え方を解説します。
在庫は形を変えた現金と捉える
在庫は、会社が現金を支払って仕入れたものであり、「形を変えた現金」そのものです。
一度現金が在庫に変わると、売れるまでは給与の支払いや設備投資に使えないため、過剰な在庫を持つことは、資金が倉庫に固定化されることを意味します。
在庫管理とは、この眠っている現金をいかに効率よく回すかという、資金管理の一環といえます。
在庫回転率から資金効率と商品の鮮度を可視化する
在庫がどれだけ効率よく売れているかを図る指標として、「在庫回転率」の考え方が重要です。
在庫回転率とは、一定期間に在庫が何回入れ替わったかを示す数値で、一般的に「売上原価 ÷ 平均在庫金額」で算出されます。
在庫回転率が高いほど、仕入れた商品が早く売れて現金化され、効率良く商売できていることになります。
隠れた維持コストを意識する
在庫を維持するためには、倉庫の賃料や光熱費、管理するスタッフの人件費、保険料など、目に見えにくい多くのコストがかかることも忘れてはいけません。
一般的に、在庫維持コストは在庫金額の20%程度といわれています。
「置いておくだけならタダ」ではなく、多くのコストがかかることを理解すると、不要な在庫を削減するモチベーションが生まれるでしょう。
在庫管理の考え方:管理手法の観点
在庫管理には、長年の実務経験から生まれた、効果的な管理手法がいくつも存在します。
これらの管理手法の考え方を理解し、自社の在庫管理に適用できれば、効率的な在庫管理が可能です。
管理手法の観点から在庫管理の考え方を解説します。
管理にメリハリをつける「ABC分析」
ABC分析は、在庫品目を重要度によってA・B・Cのグループに分類し、管理の濃淡をつける手法です。
一般的に、売上高や出荷頻度を基準に、上位70%程度をAグループ(重点管理品目)、次の20%程度をBグループ(通常管理品目)、残りの10%程度をCグループ(簡易管理品目)に分けます。
重要なものにリソースを集中させ、そうでないものは効率化するというメリハリをつけることで、効率的な在庫管理が実現可能です。
「定量発注方式」と「定期発注方式」の使い分け
いつ、どれだけ発注するかを決める考え方には、主に「定量発注方式」と「定期発注方式」の2つがあります。
定量発注方式は、在庫量が一定の水準(発注点)まで減ったときに、決められた量を発注する方式です。
需要が安定している商品に適しています。
定期発注方式は、毎週月曜日のように決まったサイクルで、そのときの需要に合わせて発注する方式です。
需要変動が大きい商品に適しています。
どちらの方式を選ぶかは、商品特性や需要の安定性、管理工数のバランスで判断しましょう。
「フリーロケーション」と「固定ロケーション」の違い
在庫をどこに置くかというロケーション管理にも、大きく2つの考え方があります。
「固定ロケーション」は、商品ごとに置く場所を固定する方法です。
初心者でも作業しやすい反面、保管効率が悪くなるデメリットがあります。
「フリーロケーション」は、空いているスペースに自由に置く方法です。
保管効率を最大化できますが、どこに何を置いたかをシステムで正確に管理する必要があります。
一般的に、定番商品が多い現場では固定ロケーション、取扱品目の入れ替わりが激しい現場ではフリーロケーションが選ばれる傾向にあります。
在庫管理の考え方:現場オペレーションの観点
実際に在庫管理業務を行う上では、現場オペレーションの効率や品質を高めるための考え方も重要です。
理論を現実に落とし込むための、現場オペレーションの観点から在庫管理の考え方を見ていきましょう。
5S活動で現場環境を整える
5S活動とは、整理(不要なものを処分)、整頓(必要なものを使いやすく配置)、清掃(きれいに保つ)、清潔(整理・整頓・清掃を維持)、躾(ルールを習慣化)の頭文字を取った改善活動です。
5Sが徹底されていないと、必要な商品が見つからない、古い在庫が奥に埋もれる、汚れや破損が見逃されるといった問題を招きます。
5Sは地味な活動に見えますが、在庫の可視化、作業ミスの削減、安全性の向上など多くの効果をもたらす、現場改善の基礎となる考え方です。
モノの移動と同時にデータを更新する
モノの移動とデータの更新を同時に行うことも、在庫管理の現場での重要な原則の1つです。
例えば、「忙しいから後でまとめて入力しよう」と考えて出荷記録を後回しにしている間に、別の担当者がデータを見て「在庫がある」と判断し受注を受けてしまうと、トラブルが発生します。
リアルタイムなデータ更新を実現するためには、ハンディターミナルやスマートフォンなどを活用し、現場ですぐに処理を完了させる仕組みを導入することが効果的です。
ミスを誘発しないレイアウトと作業動線を設計する
「人は必ずミスをする」という前提に立ち、ミスを誘発しにくい環境を作ることも有効です。
例えば、似た品番の商品を隣に置かない、よく出荷される商品を出入り口付近に配置するなど、倉庫レイアウトの工夫で作業の精度や効率が改善されます。
また、ピッキングの動線が一筆書きになるように配置すれば、行ったり来たりする無駄な移動が減り、疲労によるミスも軽減されるでしょう。
担当者の注意力に頼るのではなく、物理的なレイアウトでミスを防ぐという考え方が重要です。
在庫管理の考え方の実践にzaico
在庫管理の考え方を財務・会計、管理手法、現場オペレーションという3つの観点から紹介してきました。
こうした考え方を理解することは、在庫管理担当者として適切な判断を下し、継続的な改善を進めていく上での土台となります。
考え方を実際の業務に落とし込み、効率的に運用していくためには、適切なツールの活用が欠かせません。
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蓄積されたデータはCSVデータとして出力できるので、回転率やABC分析にも活用できます。
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