製造におけるBOMとは?製造におけるBOMの役割や種類と管理方法

BOM(部品表)は、製造業の生産活動を支える重要な情報です。

しかし、「BOMという言葉は聞いたことがあるけれど、具体的にどのようなものなのか、どう管理すれば良いのかわからない」という方も多いのではないでしょうか。

BOMの理解は、製造業に関わる方の業務の効率や精度を大きく左右します。

製造におけるBOMの基本的な知識から、製造業でのBOMの役割、種類、よくある課題、管理方法をわかりやすく解説します。

BOMとは:製造業で理解すべき基礎知識

製造におけるBOM(Bill of Materials:部品表)は、製品を組み立てるために必要なすべての部品、原材料、半製品のリストです。

BOMには、それぞれの品目名、品番、数量、そして構成関係が詳細に記載されています。

製品が複雑であればあるほど、BOMの構造も複雑です。

例えば、スマートフォンのBOMには、CPUやメモリ、バッテリー、ディスプレイなどの主要部品から、ネジや接着剤のような細かな部品まで、膨大な情報が含まれています。

BOMは設計から調達、生産、さらには保守メンテナンスに至るまで、あらゆる部門で共通して利用される、モノづくりの基盤となる情報です。

BOMとは:製造業におけるBOMの役割

BOMは単なる部品リストにとどまらず、製造プロセス全体を円滑に進めるための多様な役割を担っています。

製造業でのBOMの代表的な役割を見ていきましょう。

設計情報の共有と標準化

BOMは設計者が決めた製品構成を明確に記録し、関係部門と共有する役割を持ちます。

設計情報がBOMに標準化されることで、異なる部門間でも誤解なく情報を受け渡せるようになり、設計ミスや手戻りを防止します。

特に複雑な製品では、BOMは設計意図を伝える共通言語といえる重要な情報です。

生産計画の基盤

BOMは、生産計画を立てる上で欠かせない情報源です。

BOMを参照すれば、最終製品を1つ生産するのに必要な部品や原材料の数量が明確になります。

これにより、必要な部品の調達量を正確に計算し、生産計画への反映が可能です。

また、BOMは、生産工程の順序や組み立て手順を定める上でも重要な役割を果たします。

調達・在庫管理の精度向上

BOMは、調達部門や在庫管理部門の業務精度を向上させる上でも不可欠な情報です。

生産計画に基づいてBOMから必要な部品と数量を割り出すことで、「いつまでに、どの部品を、どれだけ調達すればよいか」が明確になります。

これにより、過剰在庫や部品不足などのリスクを最小限に抑えることが可能です。

BOMとは:製造業におけるBOMの種類

BOMには、その用途や作成する部門によって複数の種類があります。

それぞれ異なる目的を持っており、部門間で連携して活用することが重要です。

製造業で一般的に使われる代表的なBOMを解説します。

E-BOM(設計BOM)

E-BOM(Engineering BOM)は、設計部門が作成するBOMで、「設計部品表」とも呼ばれます。

製品の設計仕様に基づいて、機能や技術的な要件を満たすために必要な全部品をリスト化したものです。

製品の構造が階層的に表現され、図面番号や部品の仕様などが含まれます。

後述するM-BOMやS-BOMなど、すべてのBOMの元となる最も基本的なBOMです。

M-BOM(製造BOM)

M-BOM(Manufacturing BOM)は、「製造部品表」と呼ばれ、E-BOMの情報をもとに、製造部門が必要とする情報を追記したものです。

具体的には、部品の組み立て順序や、各部品をどの工程で使うかといった生産プロセスに関する情報が含まれます。

製造現場ではM-BOMをもとに、作業の段取りや生産スケジュールが組まれます。

製品を効率的かつ正確に製造するための指示書としての役割を果たすBOMです。

P-BOM(購買BOM)

P-BOM(Purchasing BOM)とは、「購買部品表」と呼ばれ、調達・購買部門が使用するBOMを指します。

E-BOMやM-BOMから購買に必要な部品を抽出し、それぞれの部品の仕入れ先情報、発注単位、価格、納期などの購買業務に必要な情報をまとめたものです。

P-BOMを基に、購買部門は必要な部品を計画的に発注し、部品不足を防ぎます。

S-BOM(サービスBOM)

S-BOM(Service BOM)は、「サービス部品表」とも呼ばれ、製品出荷後の保守やメンテナンス業務で利用されます。

顧客に納品した製品の修理やメンテナンスを行う際に、交換が必要となる可能性のある部品(サービスパーツ)をリスト化したBOMです。

保証期間や交換頻度などの情報も含まれることがあり、アフターサービス部門が迅速かつ的確な顧客対応を行うために活用されます。

BOMとは:製造業のBOM管理でよくある課題

ここまで見てきたように、BOMは製造の根幹に関わる重要な情報です。

しかし、多くの企業がBOMの管理にさまざま課題を抱えています。

製造業のBOM管理でよくある課題を解説します。

手作業更新によるミス

BOMを紙の台帳やエクセルで管理している場合、設計変更や部品の追加・削除があった際に、手作業でBOMを更新しなければなりません。

しかし、この手作業の更新はヒューマンエラーの温床となります。

入力ミスや転記漏れが発生しやすく、間違った情報が現場に共有されてしまうと、部品の誤発注や組み立てミスにつながり、多大なコストや時間の損失を招くことになるでしょう。

最新版BOMの共有漏れによる混乱

製品の設計は常に変更される可能性があります。

設計変更が行われた際、最新のBOM情報が各部門にタイムリーに共有されないと、大きな混乱が生じます。

例えば、製造部門が旧版のBOMを使って生産を続けてしまうと、間違った仕様の製品が生産されてしまうでしょう。

その結果、不良在庫や納期遅延が発生するリスクが高まります。

部門ごとのBOM不整合

設計部門はE-BOM、製造部門はM-BOM、購買部門はP-BOMというように、部門ごとに異なるBOMを作成・管理している場合、BOMの情報に不整合が生じることがあります。

例えば、設計変更がE-BOMには反映されたものの、M-BOMやP-BOMに反映されず、結果的に古い仕様の部品が調達・製造されてしまうような事態です。

部門間のBOMの不整合は、生産効率の低下や品質問題を招く原因となります。

BOMとは:製造業のBOM管理の方法

BOM管理には複数の方法があり、企業の規模や業務の複雑さに応じて最適な手法を選択することが重要です。

代表的な製造業のBOM管理の方法について、特徴やメリット・デメリットを解説します。

エクセルで管理する

多くの製造業で採用されているのが、エクセルを使ったBOM管理です。

汎用性の高い表計算ソフトのエクセルは、手軽にBOMを作成・編集できるため、多くの企業で利用されています。

ある程度の柔軟性があるため、企業の独自フォーマットでの管理も可能です。

一方で、手作業での更新や共有の課題は解決されません。

特に、複数の製品や複雑なBOMを管理する場合、ファイルのバージョン管理が煩雑になり、最新版がどれかわからなくなるなどの問題が発生しやすくなります。

BOM管理システムで管理する

BOM管理に特化した専用のシステムを導入する方法です。

階層構造の可視化や、部品の共通性分析、影響分析などの高度な機能により、効率的なBOM管理が実現できます。

また、設計変更の履歴管理や承認ワークフローにより、情報の品質と統制の強化も可能です。

導入にはコストがかかりますが、BOM管理を大幅に効率化し、ミスを削減できる大きなメリットがあります。

ERPシステムで管理する

ERP(Enterprise Resource Planning)システムは、企業の基幹業務を統合的に管理するシステムです。

ERPシステムは、販売、生産、会計、人事のような企業の基幹業務を統合的に管理するシステムであり、その中でBOMは生産管理モジュールの中核をなす情報として扱われます。

BOM情報が受注情報や在庫情報、原価情報などとリアルタイムに連携するため、全社的な視点での経営判断が可能です。

大規模なシステムであり導入のハードルは高いですが、経営全体の最適化を目指す企業にとっては最も強力な選択肢となります。

BOMと連携した製造業の在庫管理にzaico

BOMは、設計から製造、調達、在庫管理まで、製品のライフサイクル全体を支える重要な情報です。

BOMには、E-BOM(設計BOM)、M-BOM(製造BOM)、P-BOM(購買BOM)など、用途や作成する部門によって複数の種類があります。

BOM管理の効率化には、在庫管理システムとの連携が有効です。

在庫管理とBOM管理は密接に関連しており、部品や原材料の在庫状況をリアルタイムに把握することで、生産計画や調達業務の最適化が可能になります。

BOM管理の効率化をお考えなら、「クラウド在庫管理システムzaico」をご検討ください。

BOMで管理されている部品情報をzaicoに登録することで、生産計画に応じた部品の在庫引き当てや、発注点の管理がスムーズになります。

パソコンやスマートフォンから簡単に在庫の入出庫を記録でき、バーコードやQRコードを使った在庫管理にも対応しています。

製造業でBOMを活用した在庫管理の最適化を目指すなら、まずはお気軽にzaicoまでご相談ください。

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