「在庫管理を効率化したいけれど、専用システムの導入はコストも手間もかかりそう」とお悩みの方は多いのではないでしょうか。
多くの方が様々な用途に利用しているスプレッドシートでも、工夫次第で実用的な在庫管理表を作成できます。
無料で利用できるGoogleスプレッドシートを使って在庫管理表をゼロから作成する手順から、メリット・デメリット、効果的な運用のコツを解説します。
在庫管理表はスプレッドシートで作れる?
結論から言うと、在庫管理表はスプレッドシートで十分に作成・運用できます。
スプレッドシートとは、エクセルやGoogleスプレッドシートなどに代表される、汎用的な表計算ソフトです。
特にGoogleスプレッドシートは、Googleアカウントさえあれば誰でも無料で使えるにもかかわらず、エクセルに劣らない豊富な機能を備えています。
ただし、スプレッドシートはあくまで汎用的な表計算ソフトであるため、事業規模が拡大し、在庫品目や取引量が増えるにつれて、限界も見えてくるでしょう。
しかし、事業を始めたばかりのスタートアップや取り扱う在庫の品目数が少ない小規模な店舗など、在庫管理の「手軽さ」や「コスト」を最優先にするケースでは、スプレッドシートは有効な選択肢です。
在庫管理表をスプレッドシートで作る手順
シンプルな手順で、誰でもすぐに始められるのがスプレッドシートの強みです。
Googleスプレッドシートで在庫管理表を作成するステップを見ていきましょう。
Googleアカウントを作成する
Googleスプレッドシートを利用するためには、Googleアカウントが必要です。
すでにGmailやGoogleカレンダーなどを利用している場合は、そのアカウントをそのまま使用できます。
アカウントを持っていない場合には、「Google アカウント」と検索して、無料で簡単に作成可能です。
アカウントを作れば、Webブラウザ上でいつでもどこでもGoogleスプレッドシートを使い始められます。
管理する項目を洗い出す
次に、在庫管理で「何を」「どのように」管理したいかを検討し、必要な項目を洗い出しましょう。
一般的に、以下のような項目が挙げられます。
- 商品コード
- 商品名
- カテゴリ
- 入庫日
- 出庫日
- 入庫数
- 出庫数
- 現在在庫数
- 仕入先
自社の業務フローに合わせて、管理したい情報を過不足なくリストアップすることが、使いやすい管理表を作る第一歩です。
Googleスプレッドシートでフォーマットを作成する
洗い出した項目をもとに、スプレッドシートを開いてフォーマットを作成します。
1行目には各項目名(ヘッダー)を入力し、表としての体裁を整えましょう。
項目ごとに行の幅を調整したり、罫線を引いたり、ヘッダー部分に色をつけたりすると、視覚的に見やすい表になります。
ヘッダー行にはフィルタ機能を設定しておくと、必要な情報をすぐに絞り込めて便利です。
関数を使って計算を自動化する
手計算での在庫数管理は、ミスの原因です。
スプレッドシートの強みである関数を活用し、計算を自動化しましょう。
例えば、SUM関数を使えば特定の商品の合計在庫数を瞬時に算出できます。
また、IF関数を使い、「在庫数が安全在庫数を下回ったら『発注要』と表示する」のような条件分岐も設定可能です。
これにより、日々の在庫数の変動を正確かつ効率的に追跡できるようになります。
条件付き書式や入力規則で利便性を高める
入力ミスを減らし、管理表の利便性をさらに高めるためには、「条件付き書式」と「入力規則」の活用がおすすめです。
条件付き書式を使うと、在庫数が一定以下のセルを自動で赤色に変えるなど、視覚的にわかりやすい管理が可能です。
また、入力規則を設定すると、例えば数値欄に文字列を入力してしまうようなミスを防げます。
これらを組み合わせることで、精度の高い在庫管理表を作れるでしょう。
在庫管理表をスプレッドシートで効果的に作るコツ
基本的な在庫管理表が完成したら、さらに一歩進んだ活用方法を取り入れることで、より効果的な在庫管理が実現できます。
在庫管理表をスプレッドシートで効果的に作るコツを紹介します。
シートを分けて「マスター」「入出庫履歴」を管理する
すべての情報を1枚のシートに詰め込むと、データ量が増えるにつれて管理が煩雑になり、動作も重くなる原因です。
そこで、「商品マスター」シートと「入出庫履歴」シートのように、役割ごとにシートを分割しましょう。
「商品マスター」シートには商品の商品コードや商品名、単価などの基本情報を、「入出庫履歴」シートには日々の入出庫データを記録します。
そして「現在庫一覧」シートでVLOOKUP関数やSUMIF関数を使って、マスターと履歴を参照しながら最新の在庫状況を表示すれば、履歴データを蓄積しながら、現在の在庫状況を常に正確に把握することが可能です。
Googleフォームと連携してUIを向上する
スプレッドシートに直接データを入力する場合、誤って数式を消してしまったり、どこに入力すべきか迷ったりするミスのリスクがあります。
この問題を解決するのが、Googleフォームとの連携です。
入出庫情報を入力するための専用フォームを作成し、回答が自動的にスプレッドシートに記録されるように設定します。
これにより、現場担当者はスマートフォンからでも簡単に入力でき、負担軽減と入力ミス防止につながります。
ピボットテーブルで集計・分析する
蓄積された入出庫データをただ眺めているだけでは、経営改善にはつながりません。
そこで活躍するのが「ピボットテーブル」です。
ピボットテーブルでは、商品別や期間別、担当者別など、さまざまな切り口で膨大なデータをドラッグ&ドロップの簡単操作で集計・分析できます。
これにより、売れ筋商品や死に筋商品の傾向を明確に把握し、データに基づいた発注計画やマーケティング戦略の実現が可能です。
在庫管理表をスプレッドシートで作るメリット
スプレッドシートを使った在庫管理は、手軽さに加えて多くのメリットをもたらします。
在庫管理表をスプレッドシートで作るメリットを紹介します。
初期費用ゼロですぐに始められる
Googleスプレッドシートの大きなメリットは、コストがかからない点です。
GoogleスプレッドシートはGoogleアカウントさえあれば誰でも無料で利用できるため、専用システムのように初期費用や月額料金が必要ありません。
特に資金に限りがある小規模事業者やスタートアップにとって、リスクなく始められる最適な選択肢といえるでしょう。
ネット環境があればいつでもどこでもアクセスできる
作成したスプレッドシートはクラウド上に保存されるため、インターネット環境さえあれば、いつでもどこでもアクセスが可能です。
これにより、オフィスにいなくても、外出先や自宅から在庫状況を確認したり、データを更新したりできるため、業務の柔軟性が大幅に向上します。
特に複数拠点で事業を展開している場合や、リモートワークを取り入れている企業にとって、この特性は大きな利点です。
クラウド保存でデータ紛失リスクが少ない
パソコンのローカル環境にファイルを保存していると、PCの故障やウイルス感染、誤操作などにより大切なデータを失うリスクがあります。
Googleスプレッドシートならデータが自動でクラウド上に保存されるため、物理的なリスクの低減が可能です
また、編集履歴も自動で記録されるため、万が一誤ってデータを削除してしまっても、過去の状態に簡単に復元できる安心感があります。
リアルタイム共有・同時編集が可能
作成した在庫管理表は、共有用のURLを関係者に送るだけで、複数のメンバーと同時に閲覧・編集できる点もメリットです。
更新した内容は即座に他のメンバーの画面にも反映されるため、常に全員が最新の在庫情報を共有できます。
また、「閲覧のみ」「コメント可能」「編集可能」など、ユーザーごとに権限を細かく設定できるため、柔軟な運用も実現可能です。
在庫管理表をスプレッドシートで作るデメリットと対策
ここまで多くのメリットを挙げてきましたが、スプレッドシートによる在庫管理には限界や注意すべき点も存在します。
在庫管理表をスプレッドシートで作るデメリットと基本的な対策方法を解説します。
規模が大きくなると動作が重くなる
スプレッドシートは、あくまで表計算ソフトであり、データベース専用のソフトではありません。
そのため、取り扱う品目数や入出庫履歴のデータが増えてくると、ファイルの読み込みや関数の再計算に時間がかかり、動作が著しく遅くなることがあります。
日々の業務で使うツールが重いと、作業効率の低下はもちろん、担当者のストレスにもつながりかねません。
事業規模の拡大にともないスプレッドシートの限界が見えてきたら、専用システムへの移行を検討しましょう。
誤入力や誤削除のリスクがある
スプレッドシートは自由度が高い反面、誤入力や誤削除が発生しやすいという問題があります。
セルを間違えて上書きしてしまったり、重要な数式を削除してしまったりするミスは珍しくありません。
入力規則や保護範囲の設定である程度は防げますが、完全にミスをなくすことは難しいでしょう
重要なデータを扱う場合は、定期的なバックアップや、変更履歴の確認の習慣化が不可欠です。
管理が属人化しやすい
スプレッドシートでの在庫管理は、作成者の知識やスキルに依存しやすい点もデメリットです。
複雑な関数やマクロを駆使した高度なシートを構築すると、その作成者以外は内容を理解できず、メンテナンスや改修ができなくなる「属人化」のリスクがあります。
担当者が異動や退職した際には、在庫管理表がブラックボックス化してしまう事態も起こり得るでしょう
過度に複雑な設計は避け、誰が見ても理解しやすいシンプルな構造を心がけることも大切です。
バーコードスキャンなどの自動化が難しい
近年の在庫管理システムでは、バーコードやQRコードを使った自動読み取りが一般化しています。
しかし、スプレッドシートでこうした機能を実装するには、外部アプリとの連携やプログラミングの知識が必要で、ハードルが高いのが実情です。
手入力に頼ることになるため、作業効率やデータの正確性に限界があります。
バーコードスキャンなどの導入による効率化が必要になった場合には、専用の在庫管理システムの導入を検討しましょう。
在庫管理表をスプレッドシートから移行するならzaico
Googleスプレッドシートは初期費用ゼロで手軽に始められ、小規模な在庫管理表には十分に対応できる優れたツールです。
しかし、事業規模の拡大や業務の複雑化にともない、動作の重さや誤入力のリスク、自動化の困難さなどの課題に直面する可能性があります。
スプレッドシートでの在庫管理に限界を感じ始めたら、「クラウド管理システムzaico」をご検討ください。
zaicoは、スプレッドシートのような直感的な操作性はそのままに、在庫管理に特化した豊富な機能を誰でも簡単に利用可能です。
スマートフォンのカメラを使ったバーコード・QRコードのスキャンによる簡単な棚卸・入出庫作業も実現できます。
スプレッドシートで培った在庫管理のノウハウを活かしながら、在庫管理表をスプレッドシートから移行をご検討であれば、まずはzaicoまでお気軽にご相談ください。


