RFIDによる棚卸とは?RFIDによる棚卸のメリット・デメリット

在庫管理業務において、棚卸作業は必要不可欠ながらも多くの時間と労力を要する業務です。

特に、多品種の商品を大量に扱う企業では、正確で効率的な棚卸の実現が課題となることも多いでしょう。

この課題を解決する技術として注目されているのがRFIDを活用した棚卸です。

RFIDによる棚卸の基本から、RFIDによる棚卸のメリット・デメリット、RFIDによる棚卸の導入ポイントを確認していきましょう。

RFIDによる棚卸とは

RFIDによる棚卸とは、無線通信技術であるRFIDを利用して、在庫の有無や数量を自動的に把握する方法です。

RFIDは非接触で読み取りでき、複数のアイテムを同時に認識できる点で優れています。

まずは、従来のバーコードとの違いやRFIDによる棚卸の仕組み、活用される業界・業種を見ていきましょう。

RFIDとバーコードの違い

RFIDとバーコードはどちらも物を識別するための仕組みですが、その特徴にはいくつかの違いがあります。

バーコードは印刷された黒と白の線のパターンを光学的に読み取るのに対し、RFIDは電波を使って情報を通信する仕組みです。

RFIDとバーコードの大きな違いは、読み取り方法にあります。

バーコードは、スキャナーが直接視認できる位置になければ読み取れませんが、RFIDはタグが見えない位置にあっても読み取りが可能です。

また、RFIDは一度に複数のタグを同時に読み取ることもできます。

データ容量の面でも、RFIDタグはバーコードよりも多くの情報を保存可能です。

バーコードが最大で約20文字程度の情報しか保持できないのに対し、RFIDタグは数千文字を保存できます。

これにより、RFIDに商品の詳細情報や履歴などを記録することが可能です。

RFIDによる棚卸の仕組み

RFIDによる棚卸は、主にRFIDタグとRFIDリーダーの2つの機器を用いて実施します。

棚卸の対象となる在庫商品には、あらかじめRFIDタグの取り付け、商品の識別情報などのデータを記録しておくことが必要です。

棚卸作業時には、作業者がRFIDリーダーを使用し、範囲内にあるRFIDタグと通信を行います。

RFIDリーダーが受信したタグの情報を在庫管理システムに送信します。

在庫管理システムは、リーダーから送られてきた情報を処理し、在庫データの更新や照合などを行うことで棚卸の実施が可能です。

RFIDによる棚卸が活用される業界・業種

RFIDによる棚卸は、さまざまな業界で活用されています。

  • アパレル業界:RFIDタグを商品に取り付け、棚卸作業の効率化や万引き防止、セルフレジの導入などに活用
  • 物流・倉庫業界:入庫から出荷までの商品の追跡管理、棚卸作業の効率化、誤出荷の防止などに活用
  • 製造業界:原材料の管理、工程管理、完成品の在庫管理など、サプライチェーン全体でのトレーサビリティ向上に活用

このような業界や業種でRFIDによる棚卸は活用されています。

RFIDによる棚卸のメリット

RFIDによる棚卸には、多くのメリットが存在します。

RFIDの導入によって得られるメリットを確認していきましょう。

棚卸作業時間の大幅な短縮

従来の目視による手作業や一点ずつバーコードをスキャンする必要があった方式と比較して、RFIDはその効率性において優位性が高いといえます。

RFIDの核心的な強みは、電波を用いてICタグの情報を非接触で読み取るという点にあり、バーコードのように商品にリーダーをかざす必要がなく、専用のRFIDリーダーを用いることで、段ボールに入った商品や、棚に並んだ複数の商品に貼付されたRFIDタグの情報を、一度にまとめて読み取ることが可能になります。

さらに、RFIDリーダーは、バーコードリーダーのように直接タグを目視する必要がありません。

電波が一定の範囲内のタグを認識するため、商品をわざわざ移動させたり、梱包された箱を開封したりする手間も大幅に削減されます。

例えば、倉庫内のパレットに積まれた多数の商品も、フォークリフトに搭載したRFIDリーダーで通過するだけで、瞬時に在庫情報を収集することができます。

一度に複数の情報を非接触で読み取れるという特性と視線による制約がないという点が組み合わさることで、棚卸作業にかかる時間は、従来の方式と比較して飛躍的に短縮されます。

ヒューマンエラーの削減

従来の手作業による棚卸では、担当者が在庫を目視で数えるため、集中力の低下や疲労によって数え間違いが発生するリスクは避けられません。

また、バーコードのスキャン作業においても、読み取り漏れや、誤った商品をスキャンしてしまうといった人的なミスが発生する可能性があります。

さらに、集計されたデータをシステムに入力する際にも、入力ミスが生じる可能性があり、これらのヒューマンエラーは、在庫データの不正確さを招き、その後の発注や在庫管理に悪影響を及ぼします。

しかし、RFID方式では、RFIDリーダーが電波を用いてICタグの情報を自動的に、そして網羅的に読み取るので、人間の目や手に頼る必要がなく、数え間違いや読み取り漏れといった人的なミスを根本的に防ぐことが可能です。

一度に複数のタグ情報を正確に取得できるため、スキャン漏れのリスクも大幅に低減されます。

リアルタイムな在庫管理の実現

倉庫や店舗の出入り口、あるいは主要な通路などに固定型のRFIDリーダーを設置することで、ICタグが取り付けられた商品の移動状況を、リアルタイムで追跡することが可能になります。

商品が特定のエリアを通過するたびに、その情報が自動的にシステムに記録されるため、「いつ」「どの商品が」「どこに移動したのか」といった詳細な情報を、常に最新の状態で把握することができます。

従来の定期的な棚卸に頼る在庫管理とは異なり、現在、倉庫内のどの場所にどの商品がいくつ保管されているのか、店舗のバックヤードにどの商品がいくつあり、どの商品が販売フロアに陳列されているのか、といった情報を事務所のパソコンやタブレットから瞬時に確認することができます。

また、特定の商品の在庫数が設定した閾値を下回った場合にアラートを出すような設定をすれば、欠品のリスクを早期に察知し、迅速な補充対応を行うことができます。

RFIDによる棚卸のデメリット

RFIDはとても便利な技術ですが、導入を検討する際にはいくつかのデメリットや課題も理解しておく必要があります。

RFIDによる棚卸のデメリットを確認していきましょう。

導入コストが高額になる傾向が多い

従来のバーコードシステムと比較すると、RFIDシステムの導入には、複数の要因から高額な費用が発生する傾向があります。

まず、RFIDタグ自体の購入費用が、一般的なバーコードラベルと比較して高価です。

ICチップを内蔵し、データの書き込みや無線通信機能を備えているため、大量に導入するとなると、そのコストは無視できません。

次に、RFIDリーダーの購入費用も考慮しなければなりません。

固定型リーダー、ハンディ型リーダー、ゲート型リーダーなど、用途や設置場所に応じて様々な種類のリーダーが必要となり、その一台あたりの価格もバーコードリーダーよりも高額になることが一般的です。

さらに、RFIDシステムを機能させるためのソフトウェアの導入費用も発生します。

在庫情報の管理、リーダーからのデータ収集、既存システムとの連携などを実現するための専用ソフトウェアが必要となる場合があり、そのライセンス費用やカスタマイズ費用も導入コストを押し上げる要因となります。

電波干渉や読み取り精度の問題がある

RFIDは無線通信技術であるため、その特性上、設置環境や周囲の状況によって電波干渉を受けやすく、期待通りの読み取り精度が得られない場合があります。

特に、近距離に複数のRFIDタグが存在する場合、「コリジョン(衝突)」と呼ばれる現象が発生し、リーダーがすべてのタグ情報を正確に読み取ることができなくなることがあります。

これは、複数のタグが同時にリーダーに応答しようとすることで、電波信号が混信し、情報が正しく伝達されないために起こります。

また、工場や倉庫などの環境においては、他の電子機器から発生する電磁波がRFIDシステムの読み取り精度に悪影響を与える可能性も考慮しなければなりません。

大型の機械やモーター、無線LANなどの電波を発する機器が近くにある場合、それらの電磁波がRFIDリーダーの動作を阻害し、読み取りエラーを引き起こすことがあります。

環境・素材による影響がある

RFIDタグの読み取り性能が、使用される環境やタグが取り付けられる対象物の素材によって大きく左右される点です。

これは、RFIDが電波を利用して通信を行うという特性に起因するものです。

特に、金属製の製品や、水分を多く含む商品に通常のRFIDタグを取り付けた場合、電波が金属によって反射されたり、水分によって吸収されたりする現象が起こり、リーダーとの通信が阻害され、結果として読み取り性能が著しく低下する場合があります。

具体例として、金属製の工具や部品、アルミ缶などの飲料、水分を多く含む生鮮食品などが挙げられます。

これらの製品に通常のRFIDタグを使用しても、電波が適切に伝わらず、リーダーがタグの情報を正常に読み取れない、あるいは読み取り範囲が極端に狭くなる、といった問題が発生することが少なくありません。

タグのコストと貼付作業の負担

RFIDタグ自体のコストと、それらを商品に取り付ける貼付作業にかかる負担です。

一般的に、RFIDタグの単価は、単純な印刷物のバーコードラベルと比較して、ICチップやアンテナを内蔵しているため、その製造コストは必然的に高くなります。

管理する商品の点数が多ければ多いほど、このタグの購入費用は累積的に増加し、RFIDシステム導入全体のコストを押し上げる要因となります。

さらに、各商品にRFIDタグを手作業で取り付ける作業には、相当な時間と労力が必要となります。

特に、製品の種類が多く、形状が複雑な商品を取り扱っている場合、タグの適切な取り付け位置を検討したり、商品の形状に合わせてタグを貼り付けたりする作業は、より手間と時間を要します。

RFIDによる棚卸を成功させるポイント

RFIDによる棚卸システムの導入を成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。

RFIDによる棚卸を成功させるポイントを確認していきましょう。

現場の業務フローを分析する

闇雲に最新技術を導入するのではなく、既存の業務の流れの中に潜む課題や非効率な点を洗い出し、RFIDを導入することでどの工程がどのように改善されるのかを具体的に見極めることが、導入効果を最大化するための鍵となります。

業務フローの分析では、棚卸作業の一連の流れを細分化し、各工程における作業時間、担当者の人数、発生しやすい人的ミス(数え間違い、記録漏れ、入力ミスなど)、そしてそれに伴うコストなどを可能な限り数値化することが重要です。

例えば、「商品Aの棚卸には平均〇分かかる」「棚卸チームは〇人で構成されている」「過去の棚卸では〇件の数え間違いが発生した」といった具体的なデータを収集します。

この数値化されたデータは、RFID導入後の効果を客観的に測定するための重要な基準や具体的な目標を設定する基準にもなるので、RFID導入の費用対効果をより明確に評価することが可能になります。

投資効果(ROI)を算出する

初期投資が比較的高額になる傾向があるため、その投資に見合う効果が得られるのかを客観的に評価するために、投資効果(ROI)を詳細に算出することが不可欠です。

ROIを算出することで、RFID導入の経済的な妥当性を判断し、経営層への説明責任を果たすことができます。

ROI算出として、RFIDシステムの導入にかかる全てのコストの洗い出しやRFID導入によって期待できる具体的な効果を金額への換算を行います。

ROIの算出は、RFID導入の意思決定において非常に重要な判断材料となり、客観的な数値に基づいて投資の妥当性を評価することで、リスクを低減し、より効果的なシステム導入へと繋げることができます。

自社の課題に合ったシステムを選定する

使用する電波の周波数帯域、タグの形状や特性、リーダーの種類と機能、ソフトウェアの機能など、それぞれに特徴があり、得意とする用途や環境が異なります。

そのため、自社の抱える具体的な課題やニーズを深く理解した上で、最適なRFIDシステムを選定することが、導入を成功させるための最も重要な鍵となります。

まず、自社が管理する在庫の種類や量、そしてその保管環境を詳細に分析する必要があります。

例えば、金属製品が多いのか、液体を含む商品が多いのか、高温多湿な環境なのか、低温環境なのかといった要素は、RFIDタグの選定に大きく影響します。

また、在庫の総量や移動頻度、保管場所の広さなども、必要なリーダーの種類や設置場所、システムの規模を決定する上で重要な情報となります。

さらに、目的によって最適なシステムの構成や機能は異なるのでRFID導入によって具体的にどのような課題を解決したいのかを明確にする必要もあるでしょう。

テスト導入を行い運用課題を洗い出す

RFIDによる棚卸の導入では、まずは小規模な範囲でテスト導入を実施し、実際の運用環境でのシステムの性能や課題を検証することが重要です。

テスト導入を通じて、タグの読み取り精度やリーダーの最適な設置場所、既存システムとの連携などを確認し、課題を洗い出して対策します。

特に、読み取り環境や商品特性による影響は、机上の検討だけでは把握しきれないことが少なくありません。

テスト導入を丁寧に行うことで、本格導入後のトラブルを未然に防ぎ、よりスムーズな移行と運用開始につなげることが可能です。

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RFIDによる棚卸は従来の方法と比較して、作業時間の短縮やヒューマンエラーの削減、リアルタイムな在庫管理の実現など多くのメリットをもたらします。

一方で、導入コストが高額であることや電波干渉・環境・素材の影響、タグのコストと貼付作業の負担などのデメリットには注意しましょう。

導入を成功させるためには、投資効果(ROI)をしっかりと算出し、自社の課題やニーズに合ったRFIDシステムを選定して段階的に導入していくことが重要です。

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