企業の資産や経費を正確に把握するうえで、貯蔵品管理は重要な業務です。
貯蔵品は商品在庫ほど目立たない一方で、適切に管理しないと決算が遅れたり、換金性の高い切手・印紙の紛失に気づけなかったりといった問題につながります。
貯蔵品の管理について、会計上の定義から対象品目、会計処理の流れ、実務での貯蔵品管理の進め方やよくある課題と改善のポイントをわかりやすく解説します。
貯蔵品管理とは
貯蔵品管理とは、企業が購入したものの、まだ使用していない消耗品や事務用品、切手・収入印紙などの「貯蔵品」を、適切に把握・保管し、会計上も正しく処理していく活動のことです。
会計上は資産として扱われるため、決算で正しく評価しなければ、その期の利益や財務状況を正確に把握できません。
貯蔵品ひとつの金額が小さくても、全社で合計すると無視できない規模になることが少なくありません。
にもかかわらず、本業の在庫管理に比べて後回しにされがちで、「気づいたら大量に在庫が眠っていた」「期末の棚卸で数が合わない」といった事態が起こりやすい領域でもあります。
貯蔵品管理を適切に行うことは、決算処理を正確にするだけでなく、ムダな購入を防ぎ、資産を有効に活用するうえでも不可欠です。
貯蔵品管理の対象となる主な品目
ひとくちに貯蔵品といっても、その範囲は幅広く、業種や企業によっても異なります。
多くの企業で貯蔵品管理の対象となる品目を紹介します。
切手・収入印紙
切手や収入印紙は、貯蔵品の代表的な品目です。
切手あ収入印紙は購入した時点では通信費や租税公課として費用計上されますが、決算時点で使い切れずに残っている分は、貯蔵品として資産に振り替える必要があります。
換金性が高く、金額も比較的大きくなりやすいため、税務調査でも注目されやすい品目です。
誰がいつどの目的で使ったのかを記録しておかないと、使用履歴が追えず、紛失や不正使用のリスクも高まります。
文房具・事務用品
ボールペンやコピー用紙、ファイル、トナーなどの文房具・事務用品も、貯蔵品管理の対象となる代表的なものです。
日常的に消費されるため一見管理の必要性が低そうに思えますが、まとめ買いをした結果、決算時に大量の未使用在庫が残るケースは珍しくありません。
一つひとつは安価でも、数が多ければ全体ではまとまった金額になります。
どの部署にどれだけの在庫があるかを把握しておかないと、必要のないものを重ねて発注してしまい、コストやスペースのムダにつながります。
燃料・包装資材
製造業や物流業、店舗を運営する企業などでは、燃料や包装資材も重要な貯蔵品です。
重油やガソリンなどの燃料や、段ボール、緩衝材、梱包用のテープなどの包装資材は、事業の規模が大きくなるほど在庫量も金額も大きくなります。
とくに燃料は価格の変動が大きく、保管にも安全管理が求められるため、数量だけでなく品質や保管状態にも気を配らなければなりません。
包装資材も季節や繁忙期によって消費量が変動するため、適切な在庫水準を見極めることが求められます。
ノベルティ・販促品
販促キャンペーン用のノベルティや販促品も、未配布のまま残っていれば貯蔵品として扱います。
ロゴ入りのグッズやパンフレット、カタログ、サンプル品などは、イベントに合わせてまとめて発注することが多く、使い切れずに大量に残ってしまいがちです。
配布のタイミングが限られているため、在庫を把握しないまま追加で発注し、結果として古い在庫が倉庫に眠り続けるという事態も起こります。
デザインや内容が古くなれば使えなくなることもあり、特に計画的な管理が必要な品目です。
貯蔵品管理における会計処理の流れ
貯蔵品管理では、物品を物理的に管理するだけでなく、会計上の処理も正しく行う必要があります。
取得から決算、翌期にかけての貯蔵品管理における会計処理の流れを見ていきましょう。
取得時の費用計上
多くの企業では、消耗品や切手・印紙などを購入した時点で、いったん全額を費用として計上します。
例えば、事務用品なら消耗品費、切手なら通信費、収入印紙なら租税公課といった勘定科目を用います。
これは、少額で頻繁に消費される物品を一つひとつ資産として管理するのは煩雑であり、購入時に費用処理してしまうほうが実務上効率的だからです。
この方法を前提に、決算時点で未使用分だけを資産に振り替えるという考え方が一般的です。
期末の棚卸と振替仕訳
決算を迎えたら、貯蔵品の棚卸を行い、未使用のまま残っている物品の数量と金額を確定させ、未使用分を費用から資産へ振り替える仕訳を行います。
具体的には、借方に「貯蔵品」、貸方に消耗品費や通信費、租税公課などの当初計上した費用科目を記載する、といった具合です。
これにより、その期に実際に使った分だけが費用として残り、未使用分は資産として貸借対照表に計上されることになります。
棚卸の精度が低いと振替金額も不正確になり、決算全体の信頼性に影響するため、適切な管理が必要です。
翌期首の振戻処理
期末に資産へ振り替えた貯蔵品は、翌期首に再び費用へ戻す「振戻処理」を行うのが一般的です。
借方に消耗品費などの費用科目、貸方に「貯蔵品」を記載することで、前期末に資産計上した分を当期の費用として認識し直します。
これにより、当期も購入時に費用計上する従来の処理を続けながら、期末にあらためて未使用分を棚卸して振り替えるという同じサイクルを繰り返すことができます。
この一連の流れを毎期正しく行うことが、貯蔵品の会計処理の基本です。
貯蔵品の管理の実務上の進め方
会計処理を正しく行うためにも、その前提となる現物の管理を実務としてどう進めるかが重要です。
貯蔵品管理を適切に運用するための基本的なステップを紹介します。
管理対象となる品目を洗い出す
貯蔵品管理の最初のステップは、何を管理対象とするのかを明確にすることです。
切手・印紙や文房具、燃料、包装資材、ノベルティなど、自社にどのような貯蔵品があるのかを部署ごとに洗い出し、一覧に整理します。
このとき、金額が大きいものや換金性の高いもの、紛失リスクのあるものは特に重点的に管理する対象として位置づけておくとよいでしょう。
すべてを同じ精度で管理しようとすると負担が大きくなるため、優先順位をつけて管理範囲を決めるのが現実的です。
入出庫と保管のルールを整備する
管理対象が決まったら、どこに保管し、誰がどのように入出庫を記録するかというルールを整えましょう。
保管場所を一カ所に集約する、保管棚に品目ごとのラベルを貼る、持ち出すときには記録を残すなどの仕組みを定めることで、在庫の状況が把握しやすくなります。
担当者を明確にし、補充や発注の基準数量を決めておけば、在庫過不足も防ぎやすくなるでしょう。
ルールが曖昧なまま運用すると、管理が属人化し、担当者が変わったときに引き継ぎがうまくいかなくなります。
定期的に棚卸を実施する
貯蔵品の管理では、定期的に棚卸を実施して、帳簿上の数量と実際の在庫が一致しているかを確認することが重要です。
決算時はもちろん、四半期など定期的に棚卸を行えば、差異が生じた際に早期に原因を突き止められます。
棚卸の頻度やルールをあらかじめ決めておき、誰が担当しても同じ手順で実施できるようにしておくと、結果のばらつきを抑えられるでしょう。
記録した在庫データを蓄積していくことで、消費の傾向をつかみ、適切な発注量を見極めることにもつながります。
貯蔵品の管理でよくある課題
貯蔵品の管理は、その重要性が見過ごされがちなだけに、実務の現場ではさまざまな課題を抱えていることも少なくありません。
貯蔵品の管理でよくある課題を解説します。
部署ごとに分散して全体像が見えない
貯蔵品は、各部署がそれぞれ独自に購入・保管していることが多く、全社でどれだけの在庫があるのかを把握しにくいという問題があります。
同じ物品を別々の部署が重複して在庫している、ある部署では余っているのに別の部署では不足している、というような非効率が起こりがちです。
全体像が見えないと、決算時の集計にも手間がかかり、ムダな購入を防ぐこともできません。
部署ごとの分散管理は、貯蔵品管理が抱える課題の1つです。
切手・印紙などの使用履歴を追えない
切手や収入印紙のように換金性が高い品目は、使用履歴が記録されていないと、いつ誰が何に使ったのかを後から追うことができません。
残数だけを管理していても、使われ方が不透明なままでは、紛失や私的な流用などのリスクに気づきにくくなります。
使用のたびに記録を残す仕組みがなければ、棚卸で差異が出ても原因を特定できず、適切な管理ができているとはいえません。
棚卸に手間がかかり精度がばらつく
貯蔵品の棚卸を手作業や紙、エクセルで行っている場合、品目が多いほど作業に時間がかかり、担当者によって数え方や記録の仕方にばらつきが生じがちです。
集計の段階で転記ミスや計算ミスが入り込む余地が増え、棚卸の精度が安定しません。
手間がかかるために棚卸の頻度を下げてしまうと、実態とのずれが大きくなり、結果として会計処理の正確性が損なわれる原因です。
労力と精度の両立が難しい点は、多くの企業が抱える課題です。
貯蔵品の管理を改善するポイント
ここまで見てきた貯蔵品管理の課題を克服するためには、どのような対策を行えば良いでしょうか。
貯蔵品の管理をより効率的かつ正確にするための改善ポイントを解説します。
全社で管理ルールを統一する
部署ごとに管理がばらばらになっている状態を改善するには、まず全社で共通の管理ルールを定めることが効果的です。
どの品目を管理対象とし、どのように記録し、どの基準で発注するのかを統一することで、部署間の重複や偏りを減らし、全体の在庫状況を見渡しやすくなります。
ルールを文書化して共有し、誰が担当しても同じ運用ができるようにしておけば、管理の属人化も防げるでしょう。
ルールの統一は、貯蔵品管理を組織的に運用するための基本です。
入出庫を都度記録する仕組みをつくる
台帳への記載漏れを防ぐためには、現場で働く従業員が「負担に感じない記録の仕組み」を作ることが何よりも重要です。
わざわざファイルの山から紙の台帳を探し出し、手書きで時間をかけて記入する手間が、記録を後回しにさせる要因になります。
例えば、保管場所のすぐそばに専用のタブレット端末を設置してタップだけで記録が完了できるような仕組みを取り入れれば、手間を大きく減らせるでしょう。
これにより、リアルタイムで正確な履歴を無理なく残すことが可能になります。
在庫管理システムを活用する
棚卸の手間や精度のばらつきを改善するには、在庫管理システムの活用が有効です。
物品ごとの数量や保管場所、入出庫の履歴をシステム上で一元的に管理すれば、手作業による集計ミスを減らし、棚卸の負担も大きく軽減できます。
バーコードやQRコードを使えば、登録や棚卸の作業もスピーディーになり、誰が作業しても安定した精度を保つことが可能です。
リアルタイムで在庫状況を共有できるため、部署をまたいだ全社的な管理も実現しやすくなるでしょう。
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貯蔵品管理は、切手・印紙や文房具、燃料、包装資材などの未使用の物品を正しく把握し、期末の棚卸や振替仕訳まで適切に処理する活動です。
貯蔵品管理でよくある課題は、全社でのルール統一や都度記録の仕組みづくり、在庫管理システムの活用によって改善できます。
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複数の拠点や部署をまたいだ管理にも対応しているので、分散しがちな貯蔵品も全社でまとめて見渡せるようになります。
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