「気づいたら在庫が切れて販売機会を逃していた」「逆に過剰在庫を抱えて倉庫が圧迫されている」このような発注点の決め方や発注タイミングの判断に悩む担当者の方は多いのではないでしょうか。
適切な発注点の決め方や計算式を理解すれば、担当者の経験に頼っていた発注業務を仕組み化でき、安定した在庫管理につながります。
発注点の決め方から基礎知識と基本の計算式、業種別の需要変動要因、よくある失敗例と適切な決め方のポイントを解説します。
発注点の決め方を理解する前に押さえたい基礎知識
発注点の決め方を正しくするためには、前提となる基礎知識の理解が欠かせません。
発注点の決め方を考える前に発注点の基本的な定義、関連用語との違い、発注方式の種類を見ていきましょう。
発注点とは
発注点とは、在庫数があらかじめ定めた水準を下回ったときに発注をかけるための基準値のことです。
基準を明確にしておくことで、担当者の経験や勘に頼らず、一定のルールで発注タイミングを判断できます。
例えば「在庫が500個を下回ったら発注する」というルールがあれば、誰でも迷わず発注業務を進められ、在庫切れや過剰在庫の防止と、発注業務の属人化解消が可能です。
安全在庫・適正在庫との違い
発注点と混同されやすい用語に、安全在庫、適正在庫があります。
安全在庫は、需要変動や調達遅延に備えて常時保有しておく最低限の在庫量のことです。
一方、適正在庫は、需要と供給のバランスが取れた在庫量を意味し、過不足のない理想的な水準を表します。
発注点はこれらを踏まえたうえで、発注タイミングを判断するための基準値です。
発注方式の種類
発注方式には大きく分けて、定量発注方式と定期発注方式の2種類があります。
定量発注方式とは、在庫が一定の水準を下回ったタイミングで、あらかじめ決めた一定量を発注する方式です。
需要が比較的安定している品目や、単価の低い品目に向いています。
一方の定期発注方式は、毎週金曜日や毎月月末など、あらかじめ決めた間隔で発注し、その都度発注量を調整する方式です。
需要変動が大きい品目や、単価が高く在庫リスクを抑えたい品目に向いています。
発注点は、主に定量発注方式で使われる基準値です。
発注点の決め方:基本の計算式
発注点は、決まった計算式に当てはめて算出できます。
発注点の決め方を基本の計算式と、計算に必要な数値の求め方を順に見ていきましょう。
発注点の計算式
発注点の基本的な計算式は次のとおりです。
発注点 = 1日あたりの平均使用量 × 調達リードタイム + 安全在庫
リードタイム中に消費される見込み量に、需要変動や納品遅延に備えた安全在庫を加えたものが発注点となります。
例えば、1日あたりの使用量が100個、調達リードタイムが7日、安全在庫が200個の品目では、発注点は900個となります。
この場合、在庫が900個を下回った時点で発注すれば、納品までに在庫を切らさずに済む計算です。
平均使用量の求め方
平均使用量は、過去の出荷実績や使用実績から1日あたりの平均値を算出して求めます。
例えば、過去30日間の出荷数が3,000個であれば、1日あたりの平均使用量は100個となります。
期間は直近1〜3か月程度の実績データを使うのが一般的ですが、商品の特性によって使い分けが必要です。
季節商品や販促による変動が大きい商品の場合は、直近の数値だけでなく前年同時期のデータも参照することで、実態に即した平均使用量を算出できます。
リードタイムの求め方
リードタイムとは、発注してから自社で使える状態になるまでにかかる日数のことです。
納品後に検品や入荷処理が必要な場合は、その時間も含めて設定すると良いでしょう。
過去の発注実績を集計し、サプライヤーごとに平均値を算出するのが基本的な求め方です。
同じ品目を複数のサプライヤーから仕入れている場合は、最も長いリードタイムを採用するか、主要サプライヤーの数値を基準にするなど、自社の運用方針に応じて決めます。
リードタイムは実際にはばらつきがあるため、ばらつき分は次に解説する安全在庫で吸収すると良いでしょう。
安全在庫の考え方と代表的な求め方
安全在庫は、欠品をどの程度許容するかに応じた安全係数を決め、これをもとに必要な在庫量を算出します。
安全係数は、欠品許容率5%であれば1.65、1%であれば2.33が目安となります。
安全在庫の代表的な計算式は次のとおりです。
安全係数 × 使用量の標準偏差 × √(リードタイム)
標準偏差の算出が難しい場合は、過去の最大需要量と平均需要量の差をもとに簡易的に設定する方法もあり、自社のデータ整備状況に合わせて選ぶのが現実的でしょう。
発注点の決め方:業種別に押さえたい需要変動要因
発注点の計算式そのものは業種を問わず共通ですが、平均使用量やリードタイム、安全在庫の前提となる需要変動要因は業種によって異なります。
発注点の決め方に重要な業種ごとの変動要因を解説します。
製造業:生産計画と調達リスクが起点となる
製造業の発注点の設定は、生産計画に基づく原材料の使用量予測が起点となります。
消費財のような日々のばらつきとは異なり、計画変更や受注変動に応じて使用量が大きく動くため、生産計画との連動が欠かせません。
複数のサプライヤーから同じ部材を調達している場合は、リードタイムや品質のばらつきを踏まえて安全在庫を設計する必要があります。
特に輸入品は調達リスクが高いため、安全係数を高めに設定し、欠品が生産ライン全体に与える影響を踏まえた運用が必要です。
小売業:曜日・季節・販促による変動が大きい
小売業では、曜日や季節、販促による需要変化が大きいため、平均使用量を単純な月平均で算出すると実態と乖離しやすくなります。
例えば、週末に売上が集中する商品で平日も含めた月平均を使うと、週末の在庫切れリスクが高まりかねません。
曜日変動が大きい商品では、曜日別の平均使用量を持つか、週単位で発注点を見直す運用が有効です。
また、販促キャンペーンを実施する際には、あらかじめ発注点を引き上げて在庫を厚めに確保する運用も、機会損失を防ぐうえで重要なポイントとなります。
EC・ネットショップ:SKU数の多さがボトルネックになる
EC・ネットショップではSKU(在庫管理単位)が多く、商品ごとに販売数のばらつきも大きいため、発注点設定の難易度が高くなりがちです。
すべての商品で精緻な発注点を設定するのは現実的ではなく、運用負荷の高さがボトルネックになります。
そこで活用したいのが、ABC分析による品目の重要度分類です。
売上構成比の高いAランク商品には個別に精緻な発注点を設定し、Bランク商品は標準的な計算式で運用、Cランク商品はカテゴリ単位で簡易的に設定するなど、精度と負荷のバランスを取った運用が求められます。
発注点の決め方でよくある失敗例
発注点を設定しても、運用の前提条件が実態と合っていなければ、思ったとおり機能しません。
発注点が本来の役割を果たさない、発注点の決め方でよくある失敗例を紹介します。
平均使用量の算出期間が実態に合っていない
直近1か月のデータだけで平均使用量を算出した結果、繁忙期や閑散期の影響をそのまま受けて発注点が過大または過小になるケースがあります。
例えば、夏に需要が集中する商品の発注点を、需要の少ない春のデータだけで算出すると、夏に入った途端に発注が間に合わなくなりかねません。
季節変動のある商品で前年同時期のデータを参照しないと、発注点の精度が大きく下がり、結果として在庫切れや過剰在庫を招く原因となります。
リードタイムを短く見積もりすぎている
リードタイムをサプライヤー側の最短実績で設定してしまうと、実際の納品が遅れた際に在庫切れを起こす失敗につながります。
例えば、平均7日のリードタイムを最短実績の5日で見積もると、実際に7日かかった場合に2日分が不足する計算です。
リードタイムは、最短実績ではなく平均値を採用することで、通常想定される納品期間を発注点に織り込めます。
そのうえで、物流の混雑やサプライヤーの繁忙などのばらつきは、安全在庫の計算にリードタイムの変動を織り込むことで吸収する設計にしておきましょう。
一度設定した発注点を見直していない
発注点は一度決めたら終わりではなく、需要トレンドの変化、新商品の追加、サプライヤーの変更などの環境変化に応じて見直しが必要です。
設定当初のまま長期間放置していると、数値が実態と乖離して、頻繁な在庫切れや過剰在庫の発生を招きます。
問題が起きていても、発注点の設定が古いことが原因だと気づきにくく、担当者は個別の発注ミスや需要予測のズレとして対処してしまいがちです。
定期的な見直しの仕組みがないと、発注点はやがて形骸化し、本来の役割を果たさなくなります。
発注点の決め方を適切にするポイント
発注点を機能させ続けるためには、設定だけでなく運用の仕組みづくりが重要です。
発注点の決め方を適切にするポイントを解説します。
定期的に発注点を見直すサイクルを作る
発注点を実態に合わせ続けるには、四半期や半期ごとに見直すルールを設けるのがおすすめです。
直近の出荷実績やリードタイムの実績値を使って計算し直すだけでも、需要トレンドの変化に追いつけます。
あわせて、季節の変わり目、新商品の追加、サプライヤー変更といった節目を見直しのタイミングとして決めておくと判断に迷いません。
定期的な見直しと、変化があったときの臨時の見直しを組み合わせることが、発注点を実態から乖離させないポイントです。
担当者の経験に依存しない運用ルールを整える
発注点の設定や更新を担当者個人の判断に委ねていると、運用が属人化しやすくなります。
担当者が変わるたびに発注点の根拠がわからなくなり、結果として発注業務全体の品質が落ちる原因にもなりかねません。
そこで、計算式やパラメータの取り方、見直しの頻度などの運用ルールを明文化し、誰が見ても同じ判断ができる状態に整えることが重要です。
ドキュメントとして共有しておけば、複数人での運用や担当者の引き継ぎもスムーズに進み、組織として発注点の精度を維持しやすくなるでしょう。
在庫管理システムを活用する
品目数が増えてくると作業の手間やミスのリスクが増え、エクセルや手作業での発注点管理が難しくなってきます。
在庫管理システムを活用すれば、入出庫の登録に応じて出荷実績やリードタイムのデータが蓄積されます。
蓄積されたデータをもとに自動で計算されるので、手間をかけずに実績に基づく正確な発注点の設定が可能です。
また、アラート通知機能を利用すれば、エクセルのように定期的にファイルをチェックする必要もありません。
発注点の決め方と運用の効率化にzaico
発注点は、在庫切れや過剰在庫を防ぎ、発注業務を仕組み化するための基準値です。
計算式と運用ルールを整えたうえで、品目ごとの発注点を継続的に管理できる仕組みを整えることが重要です。
エクセルや手作業による発注点管理に限界を感じている方は、「クラウド在庫管理システムzaico」をご検討ください。
zaicoなら、蓄積されたデータをもとに、勘や直近の印象ではなく、実績に基づいた発注点を品目ごとに設定できます。
設定した発注点は、在庫が下回った時点でアラート通知が届くため、発注タイミングを逃しません。
発注点の決め方から設定や日々の運用までを仕組み化したい方は、zaicoまでお気軽にご相談ください。


