棚卸しはなんのためにする?棚卸しをする理由と必要性を解説

「棚卸しは面倒で時間もかかるし、なんのためにやるのか分からない」在庫管理業務に携わる中で、このように感じている方もいるかもしれません。

棚卸しは、単に在庫を数えるだけの作業ではありません。

企業の正確な利益を把握し、経営状態を健全に保つための非常に重要な業務になるので、棚卸しをなんのためにするのかを理解することは大切です。

棚卸しはなんのために行うのか、棚卸しをする理由から、棚卸しの実施手順、起こりがちな問題と対策を解説します。

棚卸しはなんのため?:棚卸しをする理由

在庫の棚卸しは、手間と時間がかかる作業ですが、企業経営に不可欠な業務です。

棚卸しをなんのためにするのか棚卸しをする理由を確認していきましょう。

帳簿上の在庫数と実在庫のズレを把握するため

棚卸しを行うもっとも基本的な理由は、データ上の在庫数である「帳簿在庫」と、実際に保管されている「実在庫」の数量が一致しているかを確認することです。

日々の入出庫管理をどれだけ徹底していても、入力ミスや紛失、破損などにより、帳簿と実際の在庫数がズレることは珍しくありません。

このズレを放置すると、差異が積み重なり、在庫管理が立ち行かなくなります。

棚卸しは、この在庫差異を正確に把握し、在庫管理の精度を高めるために不可欠です。

正確な財務諸表を作成するため

棚卸しは、企業の財政状態や経営成績を示す「財務諸表」を正確に作成するためにも不可欠です。

期末時点の在庫は、貸借対照表において「資産」として計上されます。

もし棚卸しをせず在庫評価額に誤りがあれば、利益が実態と乖離してしまい、適切な経営判断ができなくなるだけでなく、金融機関や投資家からの信頼を損なうことにもなりかねません。

棚卸しにより正確な在庫資産を確定させることで、売上原価が正しく計算され、企業の利益を正確に算出できます。

不良在庫・滞留在庫を洗い出すため

在庫の中には、長い間売れずに倉庫に留まっている商品があります。

これらは「滞留在庫」や「不良在庫」と呼ばれ、商品の陳腐化や劣化によって価値が低下している、あるいはまったく売れる見込みがない状態の在庫です。

棚卸しの際に、在庫の種類や数量だけでなく、入庫日や状態も確認することで、これらの「死に筋」在庫を明確に洗い出せます。

これにより、セール販売や廃棄処分などの具体的な対策を講じられ、在庫の健全化と資金繰りの改善につなげることが可能です。

過剰在庫や欠品を防ぎ適正在庫を維持するため

企業の利益を最大化するためには、在庫が多すぎず、少なすぎない「適正在庫」状態の維持が理想です。

棚卸しによって得られる正確な在庫データは、この適正在庫を維持するための重要な情報源となります。

どの商品が過剰で、どの商品が欠品しやすいのかという傾向を把握することで、発注点や発注量の見直しが可能です。

これにより、欠品による販売機会の損失を防ぎつつ、過剰在庫が引き起こす保管コストの増大やキャッシュフローの悪化といったリスクの回避につながります。

棚卸しはなんのため?:棚卸しの代表的な2つの方式

棚卸しの代表的な方式には「リスト方式」と「タグ方式」の2つがあり、それぞれにメリット・デメリットが存在します。

棚卸しを効率的に行うためには、自社の状況に合った方式を選ぶことが重要です。

棚卸しをなんのためにするのか棚卸しをする理由を理解できたら、それぞれの方式の特徴と、どのような場合に適しているのかを見ていきましょう。

リスト方式

リスト方式とは、あらかじめ帳簿在庫の品目や数量が記載された「棚卸表(在庫リスト)」をもとに、実在庫を数えてその数量を記入していく方法です。

在庫管理システムから出力したリストを片手に、記載されている保管場所へ行って現物を確認し、カウント結果を書き込んでいきます。

リスト方式のメリットは、手順がシンプルで分かりやすく、事前の準備も比較的簡単な点です。

一方、リストに記載のない在庫を見落としてしまったり、リストに記載された数量に引っ張られて思い込みでカウントしてしまったりする「予断」が生じやすいというデメリットもあります。

リスト方式は、比較的小規模で、在庫品目数が少ない場合に適した方式といえるでしょう。

タグ方式

タグ方式とは、倉庫内にあるすべての在庫品に対して、「棚札(タグ)」と呼ばれる番号付きの札を貼り付けていく方法です。

カウント担当者は現場を回って在庫の品名や数量をタグに記入し、半分を切り取って回収、残りの半分は在庫に貼り付けたままにします。

すべての在庫にタグを貼り終えたら、回収したタグを集計して在庫数を確定させます。

タグ方式は、カウント漏れや重複カウントを防ぎやすい点がメリットです。

一方、事前にタグを準備し、全在庫に貼り付ける手間がかかるというデメリットがあります。

複数人で分担して作業を進めやすいため、大規模な倉庫での棚卸しに向いている方式です。

棚卸しはなんのため?:棚卸しのステップ

精度の高い棚卸しを実現するためには、行き当たりばったりではなく、計画的に進めることが不可欠です。

棚卸しはなんのためにするのか理解出来たら棚卸しを成功させるための基本的なステップを確認していきましょう。

棚卸し計画を立てる

最初に行うのは、具体的な「棚卸し計画」の立案です。

棚卸しの実施日時や対象範囲、責任者と担当者の割り振り、採用する棚卸し方式(リスト方式 or タグ方式)、当日の作業スケジュールなどを明確に定めます。

精緻な計画が、当日の混乱を防ぎ、スムーズな進行を可能にします。

事前準備を行う

計画が固まったら、次に行うのは事前準備です。

棚卸しを効率的に進めるためには、当日の突発的な作業を少しでも減らしておくことが肝心です。

具体的には、棚卸表や棚札、筆記用具、ハンディターミナルなどの備品の準備や倉庫内の整理整頓などが挙げられます。

また、担当者間で作業手順や注意点、役割分担を周知徹底しておくことも重要です。

棚卸しを実施する

計画と事前準備ができたら、実在庫のカウント作業を進めましょう。

リスト方式の場合は棚卸表に、タグ方式の場合は棚札に、正確な数量を記録していきます。

数え間違いや記入ミスを防ぐには、2人1組で作業を行い、1人がカウントし、もう1人が記録・確認するという「ダブルチェック」体制を組むのが効果的です。

また、作業エリアを区切って担当を分け、完了したエリアが分かるように目印をつけることで、カウント漏れや重複を防ぐことが可能です。

棚卸しデータの集計・照合

カウント作業が終了したら、データを集計しましょう。

手書きの棚卸表やタグの情報をシステムに入力したり、ハンディターミナルからデータを吸い上げたりして、実在庫の合計数量と評価額を算出します。

ここで差異が見つかった場合は、「在庫差異報告書」などを作成し、どの商品でどれくらいの差異が発生しているのかをリストアップします。

この差異の把握こそが、棚卸しの重要な目的です。

差異原因を分析して在庫管理改善に活かす

棚卸しは、実在庫数を集計して終わりではありません。

発見された在庫差異の原因を分析し、次の在庫管理改善に活かすことも重要です。

例えば、差異が特定の担当者の作業時に集中しているなら、その担当者への再教育が必要かもしれません。

特定の商品の破損が多いなら、保管方法や梱包方法の見直しが求められます。

このように、差異の裏にある根本原因を追究し、再発防止策を立てて実行することで、在庫管理の精度を向上させましょう。

棚卸しはなんのため?:棚卸しで生じる問題と対策

棚卸し作業は人海戦術となることが多く、実際の作業ではさまざまな問題が発生しがちです。

どのような問題が生じやすいかを理解し対策しておくことで、棚卸しの成功と在庫管理の改善につながります。

棚卸しをなんのためにするのか把握しタラ理解しておきたい棚卸しで生じやすい問題と対策を解説します。

カウントミスや入力ミスなどのヒューマンエラーが生じる

棚卸しでよくある問題が、ヒューマンエラーです。

長時間の単純作業は集中力の低下を招き、在庫数のカウントミスや、集計時の転記・入力ミスを引き起こしやすくなります。

こうしたミスは、棚卸しの精度を低下させる原因です。

対策としては、ダブルチェック体制の徹底やバーコード・QRコードスキャンのようなツール活用、適度な休憩とローテーションなどが挙げられます。

ミスを完全にゼロにすることは難しいですが、仕組みとツールで最小限に抑えることは可能です。

棚卸しに時間がかかり本来業務が圧迫される

棚卸しは、多くの人員と時間を要する大掛かりな作業です。

特に年に1〜2回の一斉棚卸しでは、丸1日、あるいは数日間にわたって通常業務を停止して実施するケースも少なくありません。

そのため、棚卸しに時間がかかりすぎると通常業務に支障をきたし、機会損失にもつながります。

この問題の対策としては、在庫管理システムなどのIT活用による作業のスピードアップが効果的です。

また、範囲や品目を区切って定期的に棚卸しを行う「循環棚卸し」を取り入れることで、1回あたりの作業負荷を分散させることもできます。

在庫差異の原因が特定できず根本的な解決を測れない

棚卸しで差異を発見しても、その原因を特定できないという問題もよくあります。

原因が分からないまま在庫数を修正するだけでは、同じ問題が繰り返され、根本的な改善にはつながりません。

この問題を解決するには、在庫管理システムなどを活用して、日々の在庫管理記録を詳細に残しておくことが重要です。

いつ、誰が、何を、いくつ、どこから出し入れしたかを正確に記録しておけば、差異が発生した時期や場所を絞り込みやすくなります。

原因分析には手間がかかりますが、在庫管理の精度向上には欠かせないプロセスです。

担当者の負担が大きくストレスがかかる

時間のかかる単純作業、通常業務への影響、そしてミスが許されないプレッシャー。

これらが重なり、棚卸しは担当者にとって大きな身体的・精神的負担となります。

担当者の負担を軽減するには、まず適切な人員配置が必要です。

経験者と未経験者をバランスよく配置し、1人に過度な責任が集中しないようにしましょう。

また、適切な照明、台車やはしごの準備などの作業環境の整備や、こまめな休憩時間の設定も有効です。

さらに、棚卸し作業の意義や重要性を全員が理解し、チーム全体で協力する雰囲気を作ることで、モチベーションの向上につながります。

棚卸しをする理由を理解したらzaico

棚卸しは、帳簿と実在庫の差異を把握し、正確な財務諸表を作成するために不可欠な業務です。

しかし、手作業による棚卸しはヒューマンエラーや長時間労働、担当者の負担などの多くの課題を抱えています。

棚卸しの効率化と精度向上を実現するには、適切なツールの活用が有効です。

棚卸し業務のデジタル化をお考えなら、「クラウド在庫管理システムzaico」をご検討ください。

zaicoは、スマートフォンで商品のバーコード・QRコードをスキャンするだけで、簡単かつ正確に在庫数をカウント・記録できます。

データはリアルタイムでクラウド上に同期されるため、面倒な手入力や集計作業は一切不要で、棚卸しにかかる時間の大幅な短縮が可能です。

棚卸しの負担を減らし、より正確で効率的な在庫管理を実現したい方は、zaicoまでお気軽にご相談ください。

※記事内に記載されたzaicoのサービス内容や料金は記事公開時点のものとなり、現行の内容とは異なる場合があります