在庫管理はモノを扱う企業にとって、ビジネスの要となる重要な業務です。
適切な管理ができないと欠品や過剰在庫などの問題を引き起こす原因になります。
在庫管理の中でも「引当在庫」は、受注済みの注文を確実に履行する上で欠かせない概念です。
引当在庫とは何かという基本や意味から、引当在庫を適切に管理するメリット、引当在庫の管理方法、引当在庫の管理のポイントなどを確認していきましょう。
引当在庫とは
引当在庫とは、簡単に言うと「すでに出荷や使用が決まっている在庫」のことです。
顧客からの注文や、社内での生産計画などに基づいて、将来的に必要となる在庫をあらかじめ確保しておく状態を指します。
物理的にはまだ倉庫にはあっても、他の注文や用途には使えないように「予約済み」となっている在庫と考えると理解しやすいでしょう。
引当在庫の適切な管理は、欠品リスクを低減し、スムーズな企業活動を行うために不可欠な業務です。
在庫の状態:実在庫・引当在庫・有効在庫
在庫管理を行う上で、「実在庫」「引当在庫」「有効在庫」という3つの状態を理解しておくことが重要です。
それぞれの違いを明確にしましょう。
- 実在庫:現在、倉庫や店舗に物理的に存在している在庫の総数
- 引当在庫:実在庫のうち、すでに出荷や使用が決まっている在庫
- 有効在庫:実在庫から引当在庫を差し引いた、自由に販売したり使用したりできる在庫
これらの関係を式で表すと以下のようになります。
有効在庫 = 実在庫 – 引当在庫
ただ単に数で判断するのではなく、在庫の役割に応じた判断も必要になるというわけです。
在庫引当の計算例
実際の数字を使って、引当在庫の考え方を理解しましょう。
商品Aの状況が以下のとおりだとします。
- 実在庫:100個
- 受注済み注文
- 顧客Bから20個の注文
- 顧客Cから15個の注文
- 社内イベント用に10個の確保
この場合の計算は以下のとおりです。
引当在庫 = 20個 + 15個 + 10個 = 45個
有効在庫 = 100個 – 45個 = 55個
つまり、商品Aは物理的には100個ありますが、そのうち45個はすでに使い道が決まっているため、新たな注文に対応できるのは55個のみということになります。
新たに60個の注文があった場合、現在の有効在庫55個では足りないため、追加生産や仕入れが必要です。
このように、引当在庫と有効在庫を正確に把握することで、必要な対応を適切なタイミングで行うことができます。
引当在庫を適切に管理できないと生じる問題
引当在庫を適切に管理できないと、さまざまな問題が発生します。
まず、ダブルブッキングなどによる欠品が起きやすくなり、顧客への納期遅延やキャンセルにつながるリスクが高まります。
また、有効在庫の誤認により過剰発注や過剰在庫が発生し、保管コストや資金繰りの悪化を招く可能性もあるでしょう。
さらに、在庫データの信頼性が低下すると、経営判断の精度も落ち、適切な需要予測や発注計画が立てられなくなります。
このように、引当在庫の不備は、在庫管理業務の効率や経営に多くの影響を及ぼしかねない問題です。
引当在庫を適切に管理するメリット
引当在庫の適切な管理により、企業はさまざまなメリットが得られます。
引当在庫を適切に管理する主なメリットを確認していきましょう。
ダブルブッキングによる欠品を防止できる
引当在庫を適切に管理することで、同じ商品を複数の顧客から重複して受注してしまう「ダブルブッキング」の防止が可能です。
ダブルブッキングが発生すると、顧客に約束した商品を届けられない「欠品」につながり、クレームや信頼の失墜を招きます。
引当在庫を正確に把握し、有効在庫の範囲内で受注することで欠品を防ぎ、スムーズな出荷を実現できます。
有効在庫の正確な把握により過剰在庫を防止できる
引当在庫の正確な管理により、実際に販売可能な「有効在庫」を正確に把握でき、不必要な発注や生産を抑制して過剰在庫を防ぐことが可能です。
引当在庫の管理が不十分だと、引当在庫が過大に見積もられていた場合、不要な追加生産や発注を行なってしまう可能性があります。
適切に引当を管理することで、必要なときに必要な量だけを発注し、過剰在庫による保管コストの増加や資金繰りの悪化を防げます。
納期を守って顧客の信頼を維持できる
引当在庫の適切な管理により、顧客に約束した納期を確実に守り、信頼関係の維持が図れます。
引当在庫の管理が不十分だと、「在庫があるはず」と思って顧客に納期を約束したものの、実際には他の注文に使われていたため納品できないという事態が起きかねません。
確実に在庫を確保し、納期を遵守することで、顧客満足度を高めて長期的な信頼関係の維持が可能です。
経営判断のためのデータとして活用できる
正確な在庫データは、単なる在庫管理業務にとどまらず、経営戦略を立てる上での貴重な情報源となります。
引当状況や有効在庫の推移の分析により、売れ筋商品を特定したり、需要予測の精度を高めたりすることが可能です。
これにより、仕入れ計画や販売戦略、資金繰り計画など、より的確な経営判断が可能になります。
引当在庫の管理方法
引当在庫を管理するには、手作業で行う方法からITを活用する方法まで、いくつかの方法があります。
代表的な引当在庫の管理方法を確認していきましょう。
紙の台帳による管理
もっともシンプルな方法が、ノートや専用の在庫管理台帳を使って手書きで管理する方法です。
紙の台帳は初期投資をかけずに手軽に導入できる一方、記入ミスや計算ミスのリスクがある点や、リアルタイムでの共有が難しい点などが難点です。
紙の台帳は個人経営の小さな店舗や、取扱商品が限られている場合に適していますが、取引量が増えたり、複数人で在庫管理を行ったりする場合には限界があります。
エクセルを使った管理
紙の台帳より一歩進んだ引当在庫の管理方法として、エクセルなどの表計算ソフトを使う方法があります。
関数やマクロを使えば、ある程度の自動計算も可能で、引当在庫の管理の効率化が可能です。
一方で、同時編集による競合や更新漏れのリスクがある点、大量データになると処理速度が低下する点などのデメリットがあります。
在庫管理システムを使った管理
より大規模な企業や複雑な在庫管理が必要な場合には、専用の在庫管理システムを導入するのが効果的です。
在庫管理システムでは、リアルタイムでの在庫状況の把握や情報共有が容易になり、人的ミスの削減や業務効率の向上が期待できます。
クラウド型の在庫管理システムであれば、初期コストを抑えながらの導入も可能です。
引当在庫を適切に管理するためのポイント
どの管理方法を選ぶにしても、引当在庫を適切に管理し続けるためには、押さえておくべき重要なポイントがあります。
引当在庫を適切に管理するためのポイントを確認していきましょう。
優先順位や引当基準などの引当ルールを明確にする
引当在庫を効率的に管理するためには、明確な引当ルールの設定が重要です。
例えば、同じ商品が複数の倉庫にある場合や、ロットごとに管理している場合には、どの在庫を優先的に引き当てるかを決める必要があります。
ルールを明確にすることで、担当者が変わっても一貫した引当管理が可能になり、公平で効率的な引当処理が可能になります。
在庫状況をリアルタイムに更新・把握する
有効在庫の数を左右する引当在庫は、リアルタイムでの更新・把握が重要です。
在庫情報は常に変動しているため、注文が入ったときや商品が入荷したとき、出荷したときなど、在庫数が変わるタイミングでの速やかな情報更新が欠かせません。
データの即時反映により、欠品や過剰在庫のリスクを最小限に抑え、顧客への納期遵守や迅速な対応が実現します。
定期的な棚卸で在庫データの精度を保つ
どんなに気をつけていても、入力ミスや現物の紛失・破損などにより、データ上の在庫数と実際の在庫数(実在庫)に差異が生じることがあります。
そのため、定期的に棚卸を実施し、実際の在庫数を確認・修正することが重要です。
棚卸しによって在庫データの精度を保つことで、引当在庫や有効在庫の計算も正確になり、在庫管理全体の信頼性が向上します。
引当在庫の管理にzaico
引当在庫の適切な管理は、在庫管理の基本です。
引当在庫を適切に管理し、欠品や過剰在庫を防いで納期を守ることで、顧客の信頼維持につながります。
主な管理方法には紙台帳やエクセル、専用の在庫管理システムがあり、自社に合った方法を選ぶことが重要です。
引当在庫の管理をより効率的かつ正確に行うなら、「クラウド在庫管理システムzaico」の活用をご検討ください。
zaicoは引当機能を搭載しており、注文が入った際にスムーズに在庫を引き当て、有効在庫数のリアルタイムでの把握が可能です。
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