予備品とは?予備品の種類や具体例と予備品管理の課題と方法を解説

「設備の急な故障で生産ラインが停止してしまった」「交換部品を探すのに時間がかかり、大きな機会損失が起きてしまった」製造業の現場で、このような経験をされたことはないでしょうか。

安定した生産体制を維持するためには、適切な予備品管理が欠かせません。

予備品とは何かから予備品の種類、予備品管理の目的と課題、予備品の適切な管理方法を確認していきましょう。

予備品とは

予備品とは、工場などの生産現場で稼働している設備や機械が故障したり、部品が劣化したりした際に、交換や修理のためにあらかじめ準備・保管しておく部品や部材を指します。

「スペアパーツ」とも呼ばれ、生産活動を止めないための保険のような存在です。

例えば、自動車にとってのスペアタイヤを想像すると分かりやすいでしょう。

万が一のパンクに備えてスペアタイヤを積んでおくことで、路上で立ち往生するリスクを最小限にできます。

製造現場の予備品も同様に、設備トラブルという不測の事態に迅速に対応し、生産停止の時間を最小限に抑えるために不可欠なものです。

予備品とは:予備品の種類と具体例

予備品は、その用途や特性によって、一般的に3つの種類に分類されます。

それぞれの予備品の特徴を理解することで、適切な管理手法の選択が可能です。

消耗品

消耗品は、設備の稼働に伴って定期的に消費・摩耗・劣化し、交換が必要となる部品です。

代表的な消耗品には、以下のようなものがあります。

  • フィルター
  • ベルト
  • ボルト
  • オイル
  • グリス

消耗品は、比較的安価で、使用頻度が高く、ある程度の消費量が予測しやすいという特徴があります。

在庫管理においては、欠品させないように一定量を常にストックしておくことが基本です。

一般市販の機械部品

一般市販品の機械部品は、複数のメーカーから調達可能な標準的な部品です。

代表的な一般市販の機械部品には、以下のようなものがあります。

  • ベアリング
  • モーター
  • バルブ
  • センサー
  • 電気部品

市場での流通量が多く、複数の供給元が存在するため、比較的調達が容易です。

ただし、設備の仕様に合った適切な型番や規格の選定が重要で、間違った部品を調達すると設備に適合しない可能性があります。

個別購入の機械部品

個別購入の機械部品は、特定の設備メーカーでしか調達できない専用部品や、カスタマイズされた特殊部品です。

代表的な個別購入の機械部品には、以下のようなものがあります。

  • 専用の電子基板
  • 特注仕様のギアやシャフト
  • 特殊な金型
  • 専用センサー
  • 設備固有のソフトウェア

高価であることが多く、発注してから納品されるまでのリードタイム(調達期間)が数ヶ月に及ぶことも珍しくありません。

そのため、計画的な購入と厳重な保管が不可欠です。

予備品とは:予備品管理の目的

予備品は製造業の安定的な生産を支える重要な物品です。

そのため、予備品の適切な管理が欠かせません。

予備品管理をする主な目的を確認していきましょう。

生産ラインの停止を最小限にするため

予備品管理の最も重要な目的は、生産ラインの停止を最小限に抑えることです。

部品の故障やメンテナンスによる生産ラインの停止は、生産計画の遅延や納期の遅れ、売上の機会損失につながります。

予備品を適切に管理し、必要なときにすぐに使用できるようにしておくことで、修理時間を短縮し迅速に生産を再開することが可能です。

安定した生産計画を維持するため

顧客との約束を守り、計画通りに製造を進めるためにも、予備品管理は欠かせません。

仮に部品の故障で生産ラインが停止しても、予備品があれば短時間で復旧し、生産計画への影響を最小限にできます。

特に自動車や半導体など、納期が厳格に求められる業界では、予備品管理がそのまま「顧客信頼の維持」に直結します。

余剰在庫によるコスト増を防ぐため

「生産ラインの長期間の停止は絶対に避けたい」という思いから、つい多くの予備品を抱えてしまいがちです。

しかし、過剰な予備品の在庫は、保管コストの増加や資金の固定化によるキャッシュフローの悪化を招きます。

「持たないリスク」と「持ちすぎるコスト」のバランスを取ることも、予備品管理の重要な目的です。

設備寿命を延ばし効率的に運用するため

適切なタイミングでの消耗品や部品の交換は、設備全体のパフォーマンスを維持し、結果として寿命を延ばすことにつながります。

予備品の在庫状況や使用履歴を正確に管理・分析することで、どの部品をいつ交換すべきか、という最適なメンテナンスサイクルを把握することが可能です。

これにより、設備を常にベストなコンディションで稼働でき、長期的な視点での設備投資コストの削減にも貢献します。

予備品とは:予備品管理の課題

製造業の予備品管理には、さまざまな課題が存在します。

これらの課題を理解し、適切な対策を講じることが、効果的な予備品管理の実現につながります。

予備品管理の課題について確認していきましょう。

過剰在庫と欠品のバランスが難しい

予備品管理の永遠の課題ともいえるのが、過剰在庫と欠品の間の最適なバランスを見つけることです。

欠品を恐れるあまり在庫を多く持てば、前述のとおり保管コストや陳腐化リスクが増大します。

逆に、コスト削減を意識しすぎて在庫を切り詰めすぎると、突発的な故障に対応できず、生産停止による甚大な損失を被る可能性があります。

このジレンマが、現場の担当者を常に悩ませている課題です。

業務が属人化しやすい

「あの特殊な部品の場所は、ベテランのAさんしか知らない」「発注のタイミングは、長年の勘でBさんが決めている」。

このような、予備品管理業務が特定の個人の知識や経験に依存してしまう「属人化」は、多くの企業が抱える課題です。

業務が属人化していると、担当者の退職や異動により、重要な管理ノウハウが失われるリスクがあります。

使用頻度の低い予備品が陳腐化・劣化しやすい

予備品の中には、数年に一度しか使用しないようなものもあります。

こうした低頻度品は、長期間倉庫の片隅に置かれたままになりがちです。

その結果、金属部品の錆びやゴム製品の硬化・ひび割れ、電子基板のモデルチェンジなどにより、いざ使おうとしたときには使い物にならない、という事態が発生します。

予備品とは:予備品管理の方法

そもそも企業はどのような方法で予備品を管理しているのでしょうか。

アナログな方法からデジタルを活用した方法まで、代表的な予備品管理の方法を確認していきましょう。

紙の台帳管理

従来から使用されている紙ベースの台帳管理は、シンプルでコストをかけずに導入できる手法です。

入出庫記録、在庫数量、保管場所などを手書きで記録し、ファイルやバインダーで管理します。

小規模な事業所や管理対象が限られる場合には有効ですが、記録ミスや情報更新の遅れ、検索性の低さなどの課題があります。

エクセルによる管理

エクセルを使った予備品管理は、低コストで柔軟性も高いため、多くの現場で採用されている方法です。

品目ごとにシートを分けたり、関数を使って在庫数を自動計算させたりと、紙の台帳に比べて効率的に管理できます。

一方で、ファイル管理の複雑化やバージョン管理の煩雑さ、同時編集の制限、データの整合性確保などの課題があります。

中小規模の管理には適していますが、大規模になると限界が見えてくるでしょう。

在庫管理システムによる管理

在庫管理に特化した専用のソフトウェアやクラウドサービスを利用する方法です。

スマートフォンやPCからリアルタイムで予備品の在庫を確認でき、履歴管理や検索性にも優れています。

システムの導入に初期費用や月額利用料がかかりますが、近年はクラウドサービスの普及で導入のハードルは下がっています。

予備品管理に在庫管理システムが良い理由

紙やエクセルでの管理にも手軽さというメリットはありますが、予備品管理が抱える課題を解決し、管理レベルを引き上げるためには、在庫管理システムの導入が有効です。

予備品管理に在庫管理システムが良い理由を解説します。

在庫状況をリアルタイムに把握できる

在庫管理システムの最大のメリットは、リアルタイムで在庫状況を把握できる点です。

従来の手作業による管理では、記録のタイムラグや記録ミスにより、実際の在庫と帳簿上の在庫に乖離が生じがちでした。

システム化により、入出庫と同時に在庫データが更新され、常に正確な在庫状況を確認できます。

また、複数の拠点や倉庫の在庫を一元管理することで、全社的な在庫最適化が可能になります。

管理業務の標準化により属人化を解消できる

在庫管理システムの導入により、予備品の登録から入出庫、棚卸に至るまで、決められた統一ルールの上で業務を行うことが可能です。

これにより、「Aさんしか分からない」のような属人化した状態を解消できます。

作業手順が標準化されるため、担当者が変わっても業務の質が落ちることはありません。

引継ぎもスムーズになり、組織として安定した予備品管理体制を構築できます。

データ活用により適正在庫の精度を向上できる

在庫管理システムには、過去の使用履歴や消費傾向がデータとして蓄積されます。

システムに蓄積されたデータの分析により、「どの予備品が、どのくらいの頻度で、いくつ使われているか」を正確に把握可能です。

データに基づいて部品ごとの適切な発注点や安全在庫数を設定することで、「勘と経験」に頼った予備品管理から脱却できます。

これにより、持ちすぎを防ぎつつ欠品を起こさない、高精度な在庫コントロールが実現します。

予備品管理にもzaico

製造業の予備品は、生産ラインの停止を最小限に抑え、安定生産を維持するために重要なものです。

予備品管理は「持たなければ生産が止まる」「持ちすぎればコストが膨らむ」という相反する課題をどう解決するかが成功の鍵を握ります。

予備品管理に有効なのが、在庫管理システムの活用です。

予備品管理の精度向上や効率化をお考えなら、「クラウド在庫管理システムzaico」の導入をご検討ください。

zaicoはスマートフォンやPCから簡単に在庫を確認でき、QRコードやバーコードを活用した効率的な入出庫管理も可能です。

クラウドサービスなので、初期導入コストを抑えながら、自社に合った最適なプランを選べます。

予備品管理に課題を感じているなら、zaicoまでお気軽にご相談ください。

※記事内に記載されたzaicoのサービス内容や料金は記事公開時点のものとなり、現行の内容とは異なる場合があります